管理された公園や施設で行うスポーツとは異なり、自然の中で活動する登山などのアクティビティには、リスクがつきものです。想定外の天候急変や沢の増水、転倒や滑落、落石、道迷いもあるかも?
フィールドでのリスクを避けるにはどうすべきか。このシリーズでは、筆者が実際に体験した実例も踏まえて、リスク回避のために知っておくべきことを解説します。今回は、想定外の何かが起きて、計画通りに進めない場合のことを考えてみます。
突然のゲリラ豪雨で動けない!
近年、とくに夏場はこれまでになかったようなゲリラ豪雨が降ることがあります。ふつうの雨なら歩けても、滝のような降り方では足元も悪くなり、予定通りに進むことができなくなることもあります。
知人の話ですが、山で突然の雨に遭い、遠くで雷鳴も聞こえていたので、稜線上で行動するのは危険と判断し、樹林帯で雷雨をやりすごしている間に、下山に使う予定だったゴンドラの最終便を逃してしまったそうです。ラクラク♪ ゴンドラ下山のつもりが、歩いて降りなければならなくなって、とても疲れたそう。疲れただけで済んでよかったのですが、もし疲労困憊して歩けなくなれば、遭難という事案です。
道に獣がいて進めない
地元の六甲山を歩いていたら、夕方の下山するべき時間帯に、なぜか登ってくる親子連れと出会いました。
「下山しようとしてたんだけど、この先に大きなイノシシが居座っているので進めない。ほかに下山できる道はありませんか?」と言うことで、べつの道をお教えしたことがあります。
筆者自身も、ソロで歩いているときに、猿の大群に出会って、怖くて進めなかったことがあります。スズメバチがたくさん飛んでいて近寄れないという事態なども季節によってはあるかも……?
現在地をロストして進むべき方向がわからない
これも筆者の体験なのですが、紀伊半島奥地のマイナーエリアをソロで縦走していたとき、地図と現地の地形が一致せず、どうしても進むべき方向がわからなくなったことがあります。登山アプリが普及する前のことです。
その前日までは、ずっと地図を片手に現在地を確認しながら歩いていたのですが、比較的踏み跡がしっかりしてきて、ところどころで道標も見つかるようになってきたので、つい油断して、しばらく地図を見ていなかったのです。
地点名が書かれた看板のところで地図を確認したところ、地図と現地の地形が一致しない。地図通りに進もうとしても、踏み跡は薄く、地形も地図と異なっている。
地図を見ながら行ったり来たりしているうちに日没が迫ってきたので、焦る気持ちを落ち着かせ、適当なところで幕営することにしました。
しかし、夜が明けたところで、ルートがわからない状況には変わりはないし、たまたま誰かが通りかかって教えてくれるということは一切期待できないエリアでした。
結局、どう進むべきなのかがわからないまま、おおざっぱな方向だけ決めて〝突破〟を試みたのですが……
薄かった踏み跡は完全に消え、崖に出合って迂回し、沢では渡れそうな箇所を探して渡渉。最終的に、なんとか登山道に出ることができましたが、もし途中で足でも滑らせていたらそのまま行方不明という事案でした。
あとでわかったのは、使っていた登山地図に書かれていた地名の位置が間違っていたのです。そりゃいくら考えてもわからない! 非常にまれだと思いますが、地図が間違っていることもあるんです。
ずっと地図を確認していれば見抜けたことなのですが、現地ではそんな可能性はひとかけらも思い浮かびませんでした。