『焚き火と道具』は、テレビや雑誌で活躍中の焚き火マイスター・猪野正哉さんが、愛用している焚き火道具について語り尽くした1冊。マイスターの使う道具にはそれぞれに物語があり、選んだ理由、気に入っているところ、手放せなくなったポイントがあります。
今回はそんな焚き火マイスター愛用の「着火剤」について転載します。
火起こしにおける最重要アイテム「着火剤」
着火剤はスムーズな火おこしのために、いちばん重要なアイテム。
「着火剤を使うなんて邪道」と言われようが、私は火おこしの過程には重きを置いていないので、バンバン使っている。
ブッシュクラフトのように着火の過程を楽しむ焚き火もあるが、私は望まれないかぎりはやらない。それより、早いところ火を囲むことのほうが大事だと思っているからだ。
経験上、焚き火を囲んだメンバーで思い出話をするときに、「あの焚き火、よかったよね」と褒められることはあるが、「あの火おこしがよかったよね」という話になったためしがない。
火おこしは着火剤を使ってパッと済ませてしまうにかぎる。
ちなみに、焚き火マイスターが着火剤を推奨することで、火おこしのハードルが下がればとも思っている。
ジェルタイプの「ファイアマックス着火剤」を愛用
着火剤の種類は、固形とジェルタイプに大別できるが、ジェルタイプが使いやすい。
なかでも、小分けや使い切りタイプより、整髪料のジェルみたいな形状で好きな量を使える「ファイアマックス着火剤」を愛用している。
火おこしがうまくなればなるほど、使用量は少なく済む。燃え上がりやすい杉の葉と併用すれば、着火剤の安定した炎と杉の葉の火力により、確実に焚きつけが燃えてくれる。
ロウが主成分の着火剤を使うこともあるが、チロチロと燃え続けてくれるのはいいのだが、風に弱く消えてしまうことも少なくない。着火は一気に勝負をつけて、太い薪を燃やしていきたい私のスタイルには、この着火剤が合っている。
類似品が多いが、本物は炎がオレンジ色になる成分が入っている。昼間でもオレンジの炎が目視できるので、やけどしづらくありがたい。
炎の色が見えないと、間違えて着火剤を継ぎ足してしまいそうになる。