管理された公園や施設で行うスポーツとは異なり、自然の中で活動する登山などのアクティビティには、リスクがつきものです。このシリーズでは、筆者が実際に体験した実例も踏まえて、リスク回避のために知っておくべきことを解説します。
水は喉の渇きを潤すためだけではない
景色のいいところで味わうために、コーヒーのドリップセットを持っていく人、抹茶を点てる人……。飲み物にこだわりを持つ人も少なくありません。もちろん楽しむことは大事ですが、水分摂取の重要性についてはしっかりと認識しておく必要があります。
筆者はかつて、紀伊半島の奥深いエリアを幕営縦走しているとき、登山地図に表記されている「水場」が発見できなくて、ピンチに陥ったことがあります。長い縦走なので、計画段階で水場のある場所を調べて、予測される行動時間と合わせて幕営地を決め、途中の水場での補給もそれに合わせて行っていました。
その日の午後に通過した水場では、行動中に必要となる分だけを補充し、夕食分は幕営予定地近くの水場で得るつもりでした。
ところが、いくら探しても水場がないのです。その日は一日霧雨で、全身びしょ濡れなのに(泣)。
水がないため、食事を作ることができず、夕食も朝食も抜き。しかたなく、次の水場を目指して薄暗いうちに出発。幸い、2時間程度で水場にたどりつけたので事なきを得たのですが、そこも涸れていたらどうなっていたことやら。
脱水がもたらす恐ろしい障害
近年は猛暑続きで、水分補給の重要性はニュースなどでもよく耳にすると思いますが、発汗量が多いスポーツである登山では、とくに意識的に水分を摂取する必要があります。
筆者の周囲でも、「トイレが心配で……」と、水分を控えてしまう人がいます。女性に多く見受けられるのですが、脱水すると、さまざまな障害が起きます。
まず、気温が高い時期だと、熱中症リスクが非常に高くなります。
また、夏以外でも、血液中の水分量が減ることによって血液の循環が悪くなり、疲労感、倦怠感、息切れなどが起きます。
放置すると、頭痛、めまい、吐き気、低血圧を引き起こすこともあり、判断力や運動能力の低下につながります。登山中だと、最悪行動不能に陥るかもしれません。脱水症は、軽く見てはいけないものなのです。