岐阜県と長野県の県境近く、奥飛騨温泉郷にある平湯温泉は、北アルプス登山の拠点としても知られる場所。首都圏からも関西方面からもアクセスがよく、新宿・松本・高山方面からの高速バスが発着。
平湯バスターミナルからは、上高地、新穂高温泉、乗鞍岳方面へのバスが運行されています。
上高地・乗鞍岳は、マイカー規制があり、バスに乗り換えないと行けないため、平湯温泉が重要なターミナルとなっています。
バスターミナルに隣接して日帰り温泉施設「ひらゆの森」があるので、下山後温泉に入れるのも魅力。
今回は、平湯温泉にあるキャンプ場をベースとして、上高地でハイキングを楽しむプランをご紹介。
10月頃の上高地は、紅葉が美しく、冠雪して稜線が真っ白になった穂高連峰と共に楽しめる季節。秋晴れの日には絶景が広がります。
標高約1250m、奥飛騨の大自然に囲まれた平湯キャンプ場は、約200台収容の広大なオートサイトのほか、バンガローもあるので、キャンプ用品を持たずに行っても利用できます。
たくさんの露天風呂が楽しめる「ひらゆの森」まで徒歩10分というのも魅力。バスターミナルへもすぐなので、登山の拠点として活用できます。
バスの車窓も見どころがいろいろ
上高地行きのバスは、ハイシーズンなら30分に1便、それ以外でもほぼ1時間1便程度が運行されています。所要時間は約25分。
平湯バスターミナルを出発すると、すぐに安房トンネルへ入ります。長野県と岐阜県の県境で、かつては非常に通行が困難だった安房峠の下を通っています。
1997年にこのトンネルが開通するまでは、安房峠越えの旧道は道幅が狭く、大型車のすれ違いが困難だったため、しばしば渋滞が発生。平湯温泉から中ノ湯まで、ひどいときには8時間かかることもあったそうです。
このトンネルのおかげで、今はわずか5分で快適に通過できるようになりました。
中ノ湯を過ぎると、つぎは釜トンネル。最大勾配10.9パーセントというなかなかの急坂トンネルです。入り口と出口で、標高差が100mもあります。
現在使われているのは、2005年に新設されたものですが、並行して旧釜トンネルが通っています。冬に上高地から入山するときは、新釜トンネルが開通するまでは古い釜トンネルの中を歩いて通ったものですが、傾斜が強いうえ、天井からの漏水で路面がデコボコに凍結しており、真っ暗闇で、非常に怖かった記憶があります。
そして、トンネルを抜けると、とたんに別世界へ。
梓川に沿って広がる美しい森の中を走っていくと、ほどなく大正池。北アルプスの秀峰――穂高連峰の雄姿が見えてきて、一気に別天地に来た実感が湧き上がります。格調高い佇まいの帝国ホテル前を通り過ぎると、いよいよ上高地バスターミナルに到着。
アルプスの絶景を眺めながらゆるりとハイキング
今回は、バスターミナルから少し下流側にある田代池を見て、梓川の右岸から穂高神社奥宮へ、明神橋から左岸道を歩いてバスターミナルへ戻るという半日程度の周回コースを歩いてみます。
川沿いの心地よい遊歩道で、あまりアップダウンもないので、気軽に歩けるハイキングコースです。
時間がたっぷりあるなら、下流側は大正池まで足を延ばしてもいいし、上流側は徳澤園あたりまで行ってみるなど、アレンジもできます。
バスターミナルに着いたら、まずは梓川のほとりへ。
真っ白に冠雪した稜線と秋晴れの青空がくっきりとしたスカイラインを描き、息をのむような美しい景色が広がっています。
西穂高岳、間ノ岳、天狗岩、ジャンダルムとロバの耳、奥穂高岳から吊尾根でつながる前穂高岳……険しくも美しい穂高連峰の姿は雪を頂いて神々しいばかり。
ひとしきり眺めを楽しんだら、川沿いに下流へ向かいます。遊歩道は歩きやすく整備されており、道標もしっかりあるので安心です。
この周辺は、カラマツやシラカバ、ウリハダカエデ、コシアブラ、ケショウヤナギなどの落葉樹も多く、秋は黄金色に輝く黄葉が美しいエリアです。