炎のゆらぎ効果はクセになる
年間100日は火を焚く私でも、ユラユラゆれる炎は飽きることなく見入ってしまう。
近年、ノルウェーの国営放送局が12時間連続で、暖炉で薪が燃える映像を流し、話題になった。ただ火が燃えているだけなのに、視聴率は20%超えを記録したそうだ。以降、YouTubeでも薪が燃えるだけの動画がものすごく増えている。
いままで視聴率を上げるためには、子ども、動物、ラーメンの3大企画が定番だった。ここに、新たに焚き火が加わるかもしれない。早い段階で、私もYouTubeに手を出しておけばよかったと後悔している。
そんな炎のゆらぎがもたらす心地よさやリラックス効果を「1/fゆらぎ」という。身近なものだと海の波や雨音、木漏れ日、川の流れなどもこれに該当する。どれも規則的に動いたり留まっているなかに、予測できない不規則なゆらぎがある。その規則的なものと不規則なものが調和した状態が「1/fゆらぎ」だ。
『ゆらぎの世界』の著者である武者利光氏によると、木目や年輪を見るだけでも同様の効果があり、木目調のカフェや空間が落ち着くのもそのせいだそう。ということは、薪を見るだけでもリラックスできることになる。
また、人間自体もゆらいでいることがわかっていて、外からのゆらぎを得ると共鳴し、自立神経が整えられ、精神が安定する。焚き火の前で、言い争いや、取っ組み合いのケンカが起きないこともうなずける。
焚き火ができなくとも、自宅でロウソクの炎や焚き火アプリを観賞するだけでも気分はリフレッシュできる。仕事で疲れていたり、心が病んでいる人は、炎の前に座って健康な体や精神を取り戻してほしい。もし、炎に見入ってしまっている人がいたら、そっとしておこう。私が飽きないのは、この症状が重篤だからかもしれない。
【データ】
書名:『焚き火の本』
出版社:山と溪谷社