ナイフで挑戦! バトニング&フェザースティックづくり
一通り斧での薪割りが終わったら、次はナイフで薪割りをする「バトニング」に移ります。
「キャンプ場などで市販されてる薪は今割ってもらったくらいのサイズだと思うんですけど、これを燃やすのはかなり大変なんです。火起こしでは細いものをどんどん燃やしてくことが大事なので、ナイフで薪をさらに細くしていくんですね」(猪野さん)
ナタでも薪は割れるようですが、ナタの場合は用途がバトニングに限定されてしまうという理由から、猪野さんはナイフをおすすめしてくれました。ナイフであれば、食材やロープを切ったりと、いろいろな場面で使えるのだそう。
ここでも猪野さんは、バトニングをする際の正しい姿勢や、力の入れ方をしっかり教えてくれます。刃物を使う時は特に注意が必要なので、安全上の注意点をプロに細かく指導してもらえるのはありがたいですね。
猪野さんのレクチャーを聞いたら、さっそく実践です。
薪にナイフの刃を置いて、ナイフを持ち手と反対の手で、ほかの薪を使って打ちつけていきます。
ガンッ、ガンッ、ガンッガンッガンッ。
あれ、割れません。
ガンッ、ガンッ、ガンッ、ガンッガンッガンッガンッガンッガンッガンッ。
5分経過しました……全く、割れません。
周りの人たちは華麗な手さばきでどんどん割っていっていますが、私の薪はなんとも手応えのない音を立てるばかりで一向に割れてくれそうな気配がありません。日頃の行いでしょうか。
若干途方に暮れていると、キャンプたけしさんが「持ち手をもっと刃物に近づけると力が入りやすいですよ。それから叩く方の薪を、もっと硬いこちらの広葉樹に変えてみましょう」とアドバイスをしてくれました。
言われた通りに硬い木に持ちかえてみると、今度はしっかりナイフが入って割れました。よかった!
検定では上手くいかないことがあっても、講師の方がこうしてレクチャーしてくれるので、不慣れな人でも置いていかれる心配がなくて安心です。
つづいて行うのは、フェザースティックづくりです。フェザースティックとは、木をナイフで薄く削って、羽毛(フェザー)のようにしたもののこと。こうすることで木に火の粉が絡みやすくなり、着火がスムーズにいきます。
木の中心から、先端の角に向かってナイフを滑らせるように削っていくことで、このような形になります。
このフェザースティック、上手でしょう。ええ、私の作った物ではありませんからね。
ほかの参加者さんのものを撮影させてもらいました。
私はというと、いくらナイフを滑らせてもこんな風にはなりません。フェザーというか、細かい木のくずが出てくるばかりです。
散っていく木のくずを見ていると、ふと、学生時代の彫刻の授業で、ハムスターの置物を作ろうとしたときのことを思い出しました。
みんなが立派な置物を作り上げていくなかで、自分だけ時間をかければかけるほど、ただのぼろぼろの木になっていくあの感覚。不器用にしか分からない絶望だと思います。
小さな木くずを量産しながらふたたび途方に暮れていると、キャンプたけしさんが「この木くずも着火剤になりますので、大丈夫ですよ」とそっとフォローしてくれました。
ちなみに、不器用な人はフェザースティックまではできないのか? というと、全くそんなことはありません。本検定では、初心者でも簡単にできる方法もしっかりレクチャーしてくれるので、手先が器用でなくても大丈夫。
今回は撮影による時間の都合でチャレンジできませんでしたが、そのやり方を覚えればしっかりできるようになりますよ。
最後の仕上げ! ファイヤースターターで炎を上げる
そして最後は、いよいよ火つけです。ファイヤースターターという現代の火つけ石を使って、火花を起こして着火します。写真には見事なフェザースティックがうつっていますが、これは隣の方が恵んでくださったものですね。みなさん優しい方ばかりです。
ファイヤースターターを根本から擦るようにしてみると……。
ぶわっと花火のような火花が散りました!
一回では火はつきませんでしたが、なんども繰り返すと着火! 感動の瞬間です。
火が消えないように、いくつか杉の葉や割った薪を足して……。焚き火ができたところで、ここで一旦、午前の部が終了。しばらくは焚き火を見ながら、お昼休憩に入ります。
私は近くのキッチンカーで、焼き芋を買って食べることにしました。
焚き火を眺めながらあたたかい焼き芋を食べると、おいしさも一際。心も体も温まって、しあわせな気持ちになれます。アウトドアの楽しさが身に染みていくようです。
記事の後編では、焚き火検定の午後の部がスタート。着火剤を使った火起こしから、おいしい焚き火料理の裏技、そして最後に筆記試験から認定までの流れまでをご紹介します。
■取材協力
日本焚き火協会
https://www.takibi-japan.jp/