アウトドアでは、必然的に昆虫と出会う機会が多くなります。昆虫少年や虫愛ずる姫君じゃなくても、昆虫って観察してみると、意外とかわいらしく見えてくるものです。
このシリーズではそんな、ちょっと気になる虫たちについて、昆虫の専門家にお話をお聞きしていきます。
今回は、カマのような形の前脚で、生きた獲物をすばやく捕まえる昆虫界の名ハンター「カマキリ」について、箕面公園昆虫館の中峰館長に教えていただきました。
「カマキリの仲間は、日本に13種、世界では2500種くらいが知られています。箕面公園あたりでもよくみかける昆虫です」と中峰館長。
よく見られるのは8月末くらいから10月くらい。本州にいるほとんどのカマキリは秋に産卵して、卵の状態で越冬し、5月頃に孵化するそうです。成虫になる夏の終わり頃から目立つようになるのですね。
昆虫界随一! スゴ腕ハンターの狩りの方法とは
いかにも強そうなカマを振り上げ、逆三角形の顔の両端についた大きな目でぎろりとにらむ姿は、「たかが虫けら」とは言えない風格があります。「オオカマキリ」は、オスで9センチ、メスだと10センチくらいになり、ときとして小さいカエルやトカゲなどを捕食することもあるのだとか。
非常に視野が広い複眼で周囲を見回し、獲物を見つけると、身体を前後に揺らしながらそっと近づいていきます。まるで草が風になびいているような動きでじわじわと距離を詰めていくようすは、まるで忍者みたい。そして、射程距離に入ると、目にもとまらぬ早業でカマを振り上げ、ガッチリと獲物を捕らえます。そのスピードたるや、動きが素早いハエやバッタですらかなわないほど。
そして、鋭いトゲが並んだカマで抱え込み、丈夫な大アゴで、獲物を生きたままバリバリと食べてしまいます。
地域によっては、小さい鳥を捕食するカマキリもいるそうですが、あの眼でロックオンされたら、もう終わり……なのかも(怖)。
本物の「カマキリダンス」はなかなかのスゴ技
最近、動画投稿サイトで話題になっている「カマキリダンス」ですが、本物のカマキリは、べつにダンスをしているわけではありません。
ゆらゆらと風に揺れる葉っぱや枝のようにも見えるこの動き、じつは天敵である鳥などの捕食者から身を守るための「擬態」だと言われています。獲物に迫るときも、「植物のふり」をして、警戒されないように近づいていくのです。
体色も、草にそっくりの色だったり、枯れ枝にそっくりの色だったり。なかには、花にそっくりの姿をしたものもいます。東南アジアに生息する「ハナカマキリ」は、その名の通りランの花にそっくりの鮮やかな色で、幼虫は花になりすまして、成虫は花に紛れて獲物を引き寄せて食べるのだとか。