プロハンターと過ごす1泊2日の狩猟同行プログラム
三陸のほぼ中心に位置する大槌町で知られる「大槌ジビエ」。「〝害獣〟を〝まちの財産に〟」を合言葉に、捕獲した鹿を地域資源として活用し事業を行っているMOMIJI株式会社。その紹介記事に続き、MOMIJI株式会社のシカを中心としたジビエサイクルの考え方から生まれた「大槌ジビエツーリズム」より、三陸・大槌の自然を体感し、ジビエを通じて命を学ぶ体験プログラムをご紹介します。
そのふたつ目が「プロハンターによる狩猟同行&大槌鹿のBBQ~命と対峙し、獲って食べる~」。
このプログラムは1泊2日で実施。初日のスタートは、岩手県唯一の鹿肉加工事業者であるMOMIJI株式会社の加工場を見学します。「大槌ジビエ」や「大槌ジビエソーシャルプロジェクト」のレクチャー、シカの角や革を使ったアクセサリーなどの展示も見ながら、MOMIJI株式会社のシカを中心とした取り組みを学びます。
夕方からは「大槌ジビエ」を実食。代表でありハンターの兼澤さんとともに、翌日早朝から行う狩猟についての注意点をはじめ、おいしい鹿肉の食べ方など、生産者ならではの目線やこだわり、また猟師に関するリアルな話などを食事をともにしながら聞くことができます。
朝霧に包まれる牧草地の猟場へ
狩猟同行は翌日の早朝。夏なら明け方3時15分に集合し、猟場の新山高原へ朝4時に到着。シカは夜行性のため、森へと帰っていく日の出から30分~1時間が猟のチャンス。新山高原は開けた牧草地があるので、そこで草を食べるときが狙いやすいのです。
牧草地辺りは、三陸沿岸特有の夏の自然現象「やませ」の影響で、霧に包まれ真っ白になることもしばしば。幻想的で、ひんやりとした早朝の静寂に包まれるなか、参加者は前日に兼澤さんから教わった忍び猟の歩き方「忍び足」で、物音を立てずにゆっくりゆっくりとシカに近づいていきます。緊迫感が漂うなか、パーンっと銃声が響きわたると、バタッとシカが倒れる音が。
兼澤さんの高い狩猟技術により、頭部を撃ち抜かれたシカは即死状態。この場合、シカは倒れていますが心臓はまだ動いています。そこに近寄り、まだ暖かい体に触れ、参加者全員で手を合わせます。
次に血抜きです。兼澤さんは、素早くナイフで血管を切断し体内の血を放出させます。動く心臓のポンプによって、血はドボドボっと蛇口をひねったように放出されます。それにより、
「大槌ジビエ」の特徴である臭みのない、食べやすい肉質になるのです。シカは体温が高いこともあり血抜き後、素早くクルマに載せて加工工場へと搬入し、内臓などを取り除き、冷やさなければなりません。1頭60~70kgもあるシカを、みんなで力を合わせてクルマまで引きずっていきます。