自然に関する不思議を親子で解決してみませんか? 特別企画「ソトラバこども相談室」では、「〝ソト〟の不思議を解決します!」をテーマに、専門家の方々に素朴な疑問をぶつけてみました。「地形編」では、ライターで地形に詳しい西村まさゆきさんにお答え頂きます。
そもそも地球って真っ平なのかもしれない!?
川の流れによって、石や岸が少しずつ削られていくのは知っているのですが、そのまま削られ続けたら、地球は真っ平になってしまわないのでしょうか。
「川の作用で地面が削られたり、土や砂が溜まって、地面が一部平らになることはあります。おうぎ型に広がった『扇状地(せんじょうち)』という土地や、『河岸段丘(かがんだんきゅう)』という川に沿って削られ階段状になった地形がそうです。ただし、それはピンポイントの地域で起こっていることです。地球が真っ平らになることはないでしょう。
また、地中で新たな地層ができて、地面が『隆起(りゅうき)』(盛り上がること)することで、削られてもまた地面が盛り上がってきます。」
「ところで、地球の地上の表面は、そもそも真っ平なのではないでしょうか」
えっ! そんなことないです。坂があったり、山があったりデコボコしています!
「では、地球はどれほどデコボコしているでしょうか? 宇宙から撮影された地球の写真は見たことありますか? ツルッとした丸い形をしていて、とてもデコボコしているようには見えません。じつは、すでに地球の表面は真っ平らなのではないでしょうか?」
確かに、飛行機などから見た地面は、それほどデコボコしているように見えないかもしれません……。
「地球の直径は1万2742kmといわれています。一方、世界で一番高いチョモランマの高さは8849m、つまり8.849kmほどです。直径に対するチョモランマの高さはたった0.069%です。
例えば、バスケットボールの直径245mmに当てはめると、チョモランマの高さは約0.16mm。1ミリの十分の一の高さしかありません。チョモランマの高さは、バスケットボールの表面についているイボイボよりも小さいでしょう。どの視点で見るかによって、そんなふうにも考えられますね。そもそも地球はツルッとしているとも言えます」
地球規模でみれは、すでに地面は真っ平なのですね。
昔から人間が悩まされてきた川の大きな力
川が地面を削るのはどれくらいの力と言えますか?
「非常に大きな力。といえます。地形を変えてしまうほどの威力があります。『龍(りゅう)』って水の神様なんですが、強いですよね。昔からそんなふうに人の力が及ばないほどの力が川にはあるとして、恐れられたくらいです。なめてたら、大変なことになります。
かつては、大雨がふるたびに、水があふれ出て洪水になってしまい、川沿いの町や村が流されたり、田畑が水浸しになってしまう水害が発生しやすい川が、日本全国にありました。しかし現在は『治水(ちすい)』という洪水にならないための川の工事の技術が進み、各地で水害への対策が進んでいます。
治水の技術とは、ダムや堤防といった、川の水を防ぐものだけでなく、放水路という水を他に流しやるための水路などを掘り、川の流れを変える『河川改修(かせんかいしゅう)』、水をたくわえる『貯水池(ちょすいち)』を作るなどの対策があります。
ただ、それでもなお、大雨による水害は毎年のように発生しています」
怖いですね……。川の力をなめないで、人間は対処してきたんですね。
「東京の町の外周部分を流れる『荒川(あらかわ)』という川がありますけど、あれは一部、人が掘った部分があるんです。明治時代の地図をみると、その部分には人が住んでいます。あばれ川だから、荒川と名付けられて、昔から治水に苦労してきた川です」
上の画像は、堀切駅周辺の荒川の移り変わりです。左上が明治末期、右上が大正時代、左下が昭和初期、右下が現代。人家や農地がだんだん河川に変わる様子がわかります。
「新潟にも『関屋分水路(せきやぶんすいろ)』という放水路をつくる大きな治水工事がありました。昭和の中頃、町が水びたしになってしまう被害が目立つようになったことで工事計画が本格化しました。くねくねしている信濃川の河口付近を真っ直ぐにする治水工事を行ったんです」
川の形を変えてしまうなんて、とても大きな計画ですね!
もっとありますよ。昔の利根川は、東京湾に流れるようになっていたのを、都心に水が流れ込まないように、川を付け替えて太平洋に流しました。江戸時代から続いた、『利根川東遷事業(とねがわとうせんじぎょう)』と言います」
水害を最小限に抑えて東京が発展したのも、江戸時代から続けられてきた治水工事のたまものなわけですね。