人間にとっては不思議だけれど、自然界のなかで美しくたくましく生きるいきものたちを紹介するシリーズ、クラゲ編です。
さまざまな生物がいる中でも、クラゲは身近でありながら、その生態は知らないこともいっぱい。クラゲを食べるクラゲもいれば、不老不死と噂されるクラゲもいるとか。
その実態について、クラゲの展示が約80種類だという鶴岡市立加茂水族館飼育課係長・池田周平さんに聞きました。
とにかく生き方が多種多様なクラゲたち
「私がクラゲの力にとりつかれたのは、彼らのもつ多様な生き方です。飼育すればするほど、疑問点や不思議な一面が見えてきます」と池田さん。
毎年のように新しい発見が多く見つかり、同時に彼らの多様性の凄さを感じるそうです。
「クラゲは見てるだけで癒されますし、動きがおもしろいクラゲがたくさんいますが、クラゲがどのように生まれてどんな生活をしているなど、クラゲの神秘さもぜひ知っていただきたいですね」(池田さん)。
成長すると50㎝以上ほどに! 【ユウレイクラゲ】
多様で不思議なクラゲの中には、クラゲでありながらクラゲを食べる種類もいるのだとか。その一種がユウレイクラゲです。
「ユウレイクラゲは成長すると傘径50cmくらいになります。体色は白く、初夏~秋に本州中部以南に出現しますよ」と池田さん。
傘の大きさが50㎝という大型のクラゲで、英名もGhost jellyfish。海に漂う白い姿はまさに幽霊のようです。
クラゲの餌がクラゲなんてなんとも不思議
「ユウレイクラゲの傘から長い触手が伸びており、その中に毒針の入った刺胞がたくさんあります。触手で獲物を捕まえると縮めて大きな口腕に運んでいきます。このユウレイクラゲはクラゲを食べるクラゲであり、当館では弱ってしまったり、傷ついてしまったりしたミズクラゲを餌として与えているんですよ」(池田さん)。
基本的にはユウレイクラゲ同士では捕食し合うことはせず、違う種類のクラゲをいただきます。
「共食いのように聞こえますが、人間が同じ哺乳動物である牛や豚を食べることと同じなんんです」(池田さん)。
食べることは生きること。ユウレイクラゲも懸命に自然界で生きているということなんですね。
【DATA】
ユウレイクラゲ
分類:刺胞動物門 鉢虫綱 旗口クラゲ目 ユウレイクラゲ科 ユウレイクラゲ属
学名:Cyanea nozakii
不老不死? 若返る? とにかく不思議 【ニホンベニクラゲ】
クラゲには幽霊もいれば、不老不死と言われる仙人のような種類もいます。それがニホンベニクラゲです。
「ニホンベニクラゲは若返りのクラゲとして有名です」(池田さん)。
若返るとは、とてもうらやましく感じますが、不老不死というのは本当でしょうか。
「よく不老不死と言われることが多いですが、残念ながら不老不死ではありません。ちゃんと年もとるし、死ぬこともあるんですよ」(池田さん)。
死にそうになるとまれにポリプに逆戻りすることも
いくら摩訶不思議なクラゲでも、やっぱり普通の生物ということのようです。
「ただ、ひん死状態に陥るとまれに若返ることがあります。クラゲとしての寿命が尽き、クラゲになる前の段階であるポリプに若返ることができるのです。当館では若返りはさせておらず、ポリプから遊離させたクラゲを展示しています」(池田さん)
クラゲの中には大人のクラゲになる前に、ポリプと呼ばれる世代を過ごすものもいます。ニホンベニクラゲはそのポリプへ変態することがあるのだそうです。
ニホンベニクラゲは5mm程度の小さなクラゲです。加茂水族館に行ったら、ユウレイクラゲのような大型クラゲと大きさを比べてみてください。
※ポリプについて知りたい方は「ミズクラゲの一生を加茂水族館に聞く「へんないきもの・クラゲ編Vol.1」もご覧ください。