海をゆらゆら漂うクラゲ。海水浴に行った際に見たという人も多いのではないでしょうか。なんとも不思議な姿をしていますが、その一生とはどのようなものなのでしょう。
人にとってはちょっと不思議な生き物の生態を探る「へんないきもの」シリーズ。
今回は、知っていそうで知らない、クラゲの一生についてミズクラゲを例に鶴岡市立加茂水族館飼育課係長・池田周平さんに教えてもらいました。
大量発生することもあるおなじみのミズクラゲ
その名称を知らなくても、多くの人が見たことがある可能性が高いのがミズクラゲです。日本各地の海に生息していて、多くの人がクラゲといって思い浮かべるのがミズクラゲなのではないでしょうか。
「日本では有名なクラゲで、ときどき大量発生します。庄内浜では、冬に3mmほどの幼生が、春~秋に大型のミズクラゲが出現しますが、最大で約40cmにもなるんですよ」(池田さん)。
ミズクラゲは温帯や熱帯の海に生息し、微小な甲殻類や藻類、プランクトンなどを食べます。繁殖力も強いことから、大量発生することがあるそうです。
卵時代はお母さんの保育嚢の中で過ごす
そんなミズクラゲは雄と雌の間に卵で生まれ、さまざまなステージを経て育っていきます。
「まず、成熟した雄が精子を水中に放精します。雌が精子を体内に取り込み、卵を受精させます。受精卵は雌のカサの下にある口腕の保育嚢と呼ばれる器官に運ばれます」(池田さん)。
母親の保育嚢の中でぬくぬくと育つと、今度はプラヌラという段階になります。ここまでは人間も想像つきやすい普通の過程ですが、ここからがミズクラゲ特有の成長をしていきます。
仲間が無性的にどんどん増殖していくポリプ時代
「プラヌラは体に繊毛があり、回転しながら遊泳することができます。プラヌラは石や桟橋の裏側などに付着し、やがて、イソギンチャクに似たポリプへと変態します」(池田さん)。
プラヌラの期間は餌を食べませんが、ポリプになると餌を食べることができるようになります。また、ポリプはなんと無性的に増殖していきます。
そして、条件が揃うと、ポリプ、ストロビラ、エフィラ、メテフィラを経て、成体のクラゲとなっていきます。
冷たい海でくびれができてクラゲの赤ちゃんが登場
「ポリプは冬に水温が低下すると、体にくびれができ始め、お花が重なったようなストロビラになります。お花のようなものは一つ一つがエフィラと呼ばれる赤ちゃんクラゲになり、拍動を始めます。重なったエフィラは先端から遊離して泳ぎ始め、それぞれが1匹のクラゲとして成長していくんです」(池田さん)。
ミズクラゲのポリプからクラゲへの変態をストロビレーションと呼ぶそうですが、その間にも仲間を増やしていくとういう、有性と無性の二刀流の一生をミズクラゲは送っていきます。
【DATA】
ミズクラゲ
分類 刺胞動物門 鉢虫綱 旗口クラゲ目 ミズクラゲ科 ミズクラゲ属
学名 Aurelia coerulea