ハイカーに人気の北アルプスにあって、幅広い年齢層が引きも切らずに訪れる立山は別格の存在です。標高3005mの山頂に開山1500年を超える雄山神社は、日本の山岳信奉の総本山的存在であり、霊峰・富士山と石川県の名山・白山と並んで三大霊山として、数多くのハイカーの参拝を受け付けています。
そして愛らしい雷鳥との出会いも待っています。四季折々の楽しみを訴求する立山、これからのシーズンは紅葉艶やかな山容で迎えてくれます。
(注)記事内は9月時点でのレポートです。立山は概ね11月〜4月に積雪し、6月頃まで雪が残ります。初心者ハイカーは7月〜10月の間、とくに夏期のチャレンジがおすすめです
室堂から一ノ越経由雄山山頂へ
立山登山の要所といえば室堂。立山登山は長野県側扇沢からと富山県側立山にも代表的な登山口が用意され、両登山口を繋ぐ「黒部アルペンルート」が利用できるようになっています。その両方向からのハイカーを受け入れるベース基地が室堂です。立山登山はほとんどのハイカーが、ここ室堂から出立します。
スタッフが今回選んだのは室堂から一ノ越経由雄山~立山三峯を完登し、別山から雷鳥坂を下り、日をまたいで浄土山と立山三山完登を目指すルートです。あいにく天候は雨。それでも室堂から立山方向を見上げるスタッフに立山はその姿を披露してくれました。玉殿の湧水で立山の名水を汲んで、2700m地点一ノ越にある山小屋を目指します。
室堂から取り付きまでの室堂平は石を埋め込んだ整地された登山道です。左手に史跡の室堂小屋と人気の宿・室堂山荘を見て取り付き部からは緩やかな登りです。1時間弱で立山雄山への取り付き鞍部の一ノ越に到着。当日はこちらの宿「一ノ越山荘」に投宿です。一ノ越山荘では富山県産コシヒカリで炊いた白米を美味しくいただきました。
雄山山頂神社で参拝。登山道は赤が登りで黄色が下の2ウェイルール
一ノ越で目覚めを迎えます。富山市内および日本海方面は雲海に隠れていますが、龍王岳方面は朝日で赤く染まるモルゲンロートを迎えます。この日の登頂に期待感が湧き上がります。いきなり始まる急登に備えてストレッチを忘れずに。
一ノ越から登山道は上り専用の赤いマークと下り専用の黄色いマークの2WAYとなります。しっかり足もとをチェックしながら確実に赤マークをトレースして登ります。標高2850mの三ノ越と呼ばれる辺りから雄山神社社務所が見え隠れします。後ひと息です。雄山の山頂稜線は右手に一等三角点。左手に社務所。そしてその先に雄山神社鳥居が見えます。
鳥居の笠木と柱のフレーム内に雄山神社。宮司さんが纏う朱色の袈裟が清冽な青い空にひと際バエます。頂上参拝でお言葉をいただき、宮司さんに習っての万歳三唱。ここ雄山神社では掌が内側、前に倣えの状態のまま腕を上に挙げた万歳三唱となります。宮司さんの太いハリのある声量に身が引き締まります。立山はこの雄山と大汝山、富士ノ折立の3峯の総称です。
雄山神社を辞去し、続く大汝山へ。立山最高峰の大汝山(標高3015m)からは黒部ダム湖の翡翠色を見ることができます。
剱の先端が見えた! 岩の殿堂、黒鉄の岩綾、憧れと畏怖の剱岳登場
大汝山から富士ノ折立へ続く途上の休憩小屋はもうひとつの人気スポット。食事や飲み物&手ぬぐいなどの小物アクセサリーが買えます。この富士ノ折立(標高2999m)が思いの外難儀します。雄山側からのアプローチが若干不明瞭で、急峻な岩場。慎重に慎重を重ねて岩を辿って山頂へ。ビギナーの方は山頂を避けて巻き道を選んでも問題ないと思います。
富士ノ折立を下り、名物「大走り」分岐を行き過ぎて真砂岳。ここからは2018年に氷河認定された「内蔵助雪渓」を見下ろすことができます。そのささやかな面積の雪渓に、雄山神社の宮司さんの言葉が思い起こされます。「年を追うごとに小さくなっている」。あるがままは大事だけれど放置はまた別問題。立山の景観を守るためにささやかでも自助努力に励みたいものです。
真砂岳から登り返しを踏ん張って続く別山へ。標高2874mの別山は立山、浄土山と並ぶ立山三山の一座です。別山から剱岳登頂者の前線基地でもある別山乗越へ下ります。標高差約100mを一気に下る登山道は浮石に注意が必要です。
別山乗越は剱岳登頂と、大日岳方面への登山道と雷鳥沢に下るルートの分岐点として格好の休憩場所です。ザックを下ろして水分補給中に晴れたガスから剱岳の先端部が姿を現してくれました。まさに黒鉄。その優しさも思いやりも感じられない尖った威容に圧倒されます。