深海ならではの環境が太古の魚を現代に伝えた
かつて、シーラカンスは多くの種類が存在し、川や湖などの淡水にも生息していましたが、26属に分類されるうち、今は深海に住む2種類のみが確認されています。
「一説には、深海の環境が氷河期などの影響もさほど受けず、安定した世界だったからではないかと言われています」(山口さん)
まさに、神秘の深海だからこそ起きた奇跡ということかもしれません。
背骨がなくてヒレに関節があるのが大きな特徴
ところで、シーラカンスと普通の魚の違いとはどのような点があるのでしょうか。
「シーラカンスが他の魚と違うところは、背骨がないんです。脊椎動物なのに不思議ですよね。かわりに、脊柱という、ちくわのような形をした器官があるんです。筒状で中に体液がつまっています。また、体の中が柔らかい分、うろこは鎧のように固いんですよ」(山口さん)。
不思議な体をしたシーラカンスですが、ヒレにも大きな特徴があるそうです。
「シーラカンスのヒレの付け根には骨があって関節があるんです。肉付きもよくて、ヒレをくるくる回すこともでき、自在に動かして泳ぐことができるんですね。尾ヒレは小さくて、だから早く泳げないのですが、その分、とても小回りが利いて、器用な泳ぎ方ができるようなんです」(山口さん)。
陸上に進出する進化の過程だったのかも!?
「胸ビレや腹ビレは手足に近いとも言われていて、じつは地上で生活する進化の過程だったのではないかという説があるんです。湖や川に住んで絶滅したシーラカンスはまさに、これから進化して地上に上がろうとしていた過程だったのではと想像すると、もっとロマンを感じてきますよね」(山口さん)。
ちなみに日本を代表する深海である駿河湾の目の前にある沼津港深海水族館 シーラカンス・ミュージアムには、シーラカンスの剥製標本が3体、冷凍保存された標本が2体展示されています。
また、ホルマリン漬けされた脊柱も見られるそうなので、興味のある方はぜひ観察してみてください。毎日、飼育員によるシーラカンスに関する解説があるので、それを聞きながら、太古の深海の世界を楽しんではいかがでしょうか。解説時間などは沼津港深海水族館 シーラカンス・ミュージアムのホームページでご確認下さい。
【DATA】
シーラカンス
学名 Latimeria chalumnae
分類 シーラカンス目 ラティメリア科
【取材協力】
■沼津港深海水族館 シーラカンス・ミュージアム
※2023年10月現在の情報です。最新の情報につきましては施設にお問い合わせ下さい