尾道発のしまなみ海道サイクリングは、広島県境を超えた最初の島の大三島までが1日コース。各島の橋の前後以外は比較的平坦な海岸沿いを走り、多島美を眺めながらの爽快なサイクリングが楽しめます。耕三寺や大山祇神社といった、名刹も見どころ。自然美と歴史的景観をめぐる、変化に富んだコースです。
向島の市街地を抜けると海峡沿いの島風景の中へ
起点は尾道駅で、向島へは3航路ある渡船の中から尾道渡船を利用。向島は大林宣彦監督の尾道新三部作の映画『あした』の舞台で、兼吉渡場にはロケに使われた「兼吉バス待合所」が残っています。向島へ渡るとしばらくは市街を走行、御幸瀬戸に突き当たって折れると、ときおり漁船が航行する海峡ののどかな風景が続いていきます。
漁船の船溜まりが続いた先、瀬戸をまたぐ橋は、対岸の岩子島を結んでいる向島大橋。赤いアーチ橋をくぐった先で、正面に海が開けます。因島との間の布刈瀬戸で、沿道にはめかり鼻などの海岸景勝も。向島休憩所からは因島を結ぶ吊り橋、因島大橋の優美な姿が遠望できます。
水軍の歴史的景観から造船で栄えた名残を見て
橋の直下にある立花臨海公園で一休みしてから、因島大橋へのアプローチの上りへ。布刈瀬戸が次第に広がり、巨大な橋が目線の高さに迫ってきます。橋を渡るサイクリングロードはほぼ、車道に沿って設けられていますが、因島大橋は車道の下の橋桁内に設置。直下に布刈瀬戸を見下ろせ、トラス越しに因島の大浜埼灯台などのパノラマが楽しめます。
因島は戦国期の海賊・因島村上水軍が根拠地にした島で、造船でにぎわった歴史もあります。因島大橋記念公園の展望台から、長さ1270mの吊り橋を眺めてから、橋のたもとに下って因島アメニティ公園で休憩。恐竜のザウル君がシンボルの緑地公園で、白砂の海岸のしまなみビーチの間近には、無人島の四十島が浮かんでいます。
因島アメニティ公園からしばらくは、平坦な道のりを 走っていきます。鉄工団地の事業所群を過ぎると、ビニールハウスや露地栽培の畑作地帯に。さらに村上水軍ゆかりの白滝山、船溜まり、重井川、小さな峠越えと 、変化に富んだ風景が続きます。重井西港を過ぎて海沿いへ出ると、かつてのにぎわいを彷彿させます。
多島美に溶け込んだ海沿いのアートをめぐる
斜張橋の生口橋を渡った先は、生口島。島の北岸をめぐり、瀬戸田の市街へと出ます。市街の入口に構える耕三寺は「西の日光」とも称される、絢爛豪華な伽藍が見もの。東照宮陽明門の図面を基に造られた「孝養門」、宇治平等院鳳凰堂を原型とした本堂など、国内の主要な寺院のものを模した堂宇や仏像が、多数建ち並んでいます。
市街は耕三寺の門前町でもあり、昭和の商店街の風情があふれる「しおまち商店街」には、名物のタコ料理の店などの食事処も。「中華せとだ」は地元でも評判が高い町中華で、おろしにんにくがたっぷりのにんにくラーメンは、パワーチャージにもってこいです。
瀬戸田の市街を抜けると、南国風の青色の海に沿った爽快なシーサイドサイクリングに。瀬戸田ビエンナーレ(’91〜’99)で設置されたオブジェも点在、「島ごと美術館」と称して、海や海岸の風景に溶け込んでいます。瀬戸田サンセットビーチにはサイクリングターミナルが設けられ、休憩にもってこい。夕日がすばらしい浜で、黄昏時にはあたり一面がオレンジ色に染まります。