ソトラバ

咬まれたら即入院!? 日本で最も被害件数が多い毒ヘビ・マムシの「生態と対策」

楽しい外遊びはソトラバで。アウトドアWEBメディア Soto Lover

  • 森の中のマムシ
  • 落ち葉の上のマムシ
  • 犬の散歩
  • 地を這うマムシ
  • 注意看板

自然を楽しむキャンプや登山などのアウトドア活動では、ハチやヘビなどをはじめとした危険生物に遭遇する可能性があります。自然環境は、もともとそうした生物たちが利用する場所でもあるので、私たちはそれを意識し、いかに事故を起こさないようにするかが、事故予防につながる大切な心構えとなります。

今回は、そのなかでもとくに注意したい毒ヘビについて紹介します。

安全に自然を楽しむには、毒ヘビとの遭遇も想定しておかなければなりません。ヘビがすべて毒をもつわけではないこと、毒ヘビに咬まれたらどうすべきかなどの知識は、いざというときの助けになります。

野外における危険生物への対策研究とその指導を専門とし、『危ない動植物ハンドブック』(自由国民社)や『身近にあふれる危険な生き物が3時間でわかる本』(明日香出版社)などの著書をもつ、一般社団法人セルズ環境教育デザイン研究所の代表理事所長・西海太介(にしうみだいすけ)さんに、毒ヘビの代表格であるマムシについて話をお聞きしました。

ヘビってそもそもどんな生き物?

研究のために毒ヘビの調査に出かけたり、血清作りに携わったりしているという西海さんは、ヘビに対する一般的なイメージと、実際のヘビの性格には、意外と相違があると言います。

「ヘビはどちらかというと神経質な生き物です。環境が変化したり、ちょっかいを出されたりすると、ストレスで拒食症を引き起こして死んでしまうことがあります」(西海さん)

獰猛かと思いきや、意外にもナイーブな生き物なのです。

「ヘビは日本に約50種いて、ほとんどの種は南西諸島をはじめとする島々に生息しています。北海道から九州にかけているのは8種で、そのうち毒ヘビはマムシとヤマカガシのみです」(西海さん)

さらに、北海道にはそのうち5種しかおらず、毒ヘビもマムシのみとのこと。毒ヘビの種類が少なく感じられますが、ハチに続いて日本で死者の多い有毒生物はヘビ。なかでも被害のほとんどはマムシだそうです。

マムシとはどんなヘビなのか、その特徴を見ていきましょう。

攻撃的ではないが強い毒をもつマムシ

マムシは体長40~60cm。胴が太いずんぐりむっくりの体形で、一般的に「銭形模様」と呼ばれる模様をもちます。山地や里山に生息し、おもにカエルやネズミなどを食べています。

「人を襲うために向こうから近寄ってくることはありませんが、強い毒があるので要注意です。被害件数は年間1000~3000件で、例年平均4~5人程度が亡くなっており、日本の毒ヘビの中で最も死亡者数が多いヘビです」(西海さん)

毒はいわゆる出血毒で、筋肉の融解を引き起こし、患部は強く腫れます。

「咬まれると基本的に入院となり、重症の場合は組織障害や腎機能障害などの後遺症が出ることがあります」(西海さん)

マムシを見かけたときに、ほかのヘビとの区別はつくのでしょうか。

「体色は茶色が一般的ですが、地域により赤茶色、灰色、黒などの変異があります。また、黒い線の中に目があるような模様も特徴的です。ただし、慣れていないと見間違えることがあり、無毒のヘビと間違えてつかみ、咬まれる事故が起こった例もあります」(西海さん)

触らぬ神にたたりなし。自分の判断を過信せず、不用意に近寄ったり触れたりするのは避けたほうがよさそうです。

温度を可視化するセンサーをもつマムシ

西海さんによると、マムシに咬まれるパターンはおもに次の3つだそうです。

1.ちょっかいを出して咬まれる

2.作業をしていて咬まれる

3.散歩中に咬まれる

「とくに3については、サンダルで犬の散歩をしていたら咬まれた、というのが典型例です」(西海さん)

待ち伏せ型の狩りをするので、落ち葉の上などにいると見分けにくく、誤って踏んだり、近くに足をおろしてしまうこともあるのだそう。靴を履くだけでも被害の予防効果があるとのこと。

「マムシの毒牙の長さは約4mm。一般的なスニーカーや登山靴はそれ以上の厚さがあるので、万が一咬まれても皮膚に届きにくくなります。また、長ズボンをはくだけでも事故予防に一定の効果が期待できます」(西海さん)

肌を露出しないことにも大きな意味があるとのこと。

「マムシやハブには『ピット器官』というセンサーがあり、サーモグラフィーのように体温を可視化して認識できます。つまり、肌を露出していると暗闇でも丸見えなんです」(西海さん)

マムシに手袋を近づける実験をすると、それだけではあまり攻撃してこない、ということが起こるのだそうです。

「体温を見せる状態は、彼らが“咬む”という行動を起こすトリガーになります。ソックスが短かったりして、素肌が見えているとそこが狙われます」(西海さん)

アウトドアや農作業などの野外活動で「肌の露出を控える」のは、擦り傷などのケガだけでなく、マムシ対策としても有効なようです。

大阪オートメッセ2025