切通しとは、山を切り開いて人や馬が通れるようにした道のことです。
三方を山に囲まれた要害の地、鎌倉にはあちこちに切通しがあります。とくに有名なのが、『吾妻鏡』に記述のある名越切通(なごえきりどおし)や朝夷奈切通(あさいなきりどおし)など、「鎌倉七口」と呼ばれる7つの切通し。しかしそれ以外の切通しだって、趣があってなかなか素晴らしいのです。
「かまくら景観百選」に選定されている高野の切通し
今回訪れるのは、鎌倉七口〝じゃないほう〟の切通しの中でもマイナーな高野の切通しと大船の切通し。
JR北鎌倉駅の下り線ホームにある「大船寄り臨時改札」を出て、線路沿いをまっすぐ歩いたら、右手に見えてきた赤い洞門をくぐります。異世界への入口のような素掘りのトンネルを抜けたあとは、グーグルマップをチェックしながら住宅街を歩いていきます。
10分ほど歩くとアスファルトの道が途切れ、その先には未舗装の土道が伸びています。ここが1999年(平成11年)、「かまくら景観百選」に選定された高野の切通し(長窪の切通し)です。
切り立った崖の高さは3~4mといったところでしょうか。人がぎりぎりすれ違える幅の道を進むと、苔むしたところあり、崖伝いに木の根が這っているところありと、雰囲気もバッチリです。鎌倉市内のほかの切通しと比べて規模は小さいものの、とても美しく、そして歩きやすいのも魅力的でした。
一気に中世へタイムスリップしたような気分を味わった高野の切通しを通り過ぎると、ふたたび住宅街へ。パッと目の前が明るくなり、いつもの世界に戻ってきた! という不思議な安堵感に包まれながら、次の切通しを目指します。