約2時間の登りで異世界感あふれる山頂部へ!
石室山荘・覚明堂を過ぎると、山頂エリアの平坦部へ。巨大な山体を持つ御嶽山は、山上エリアにかつての噴火口である池がたくさんあります。最も高い剣ヶ峰の北側には今は水が枯れている一ノ池、その下に砂だらけながらわずかに水をたたえた二ノ池。さらに、北側には三ノ池、四ノ池、五ノ池まであります。
現在、剣ヶ峰の山頂部には、しっかりとしたシェルターがいくつも建てられています。
2014年の噴火は、ここからすぐ南西側の地獄谷で起きたのです。
火砕流や火山性ガスは避けられないにしても、かなり強固な建造物なので、この中に避難することができれば、噴石の直撃からは逃れることができそうです。もちろん、シェルターが潰されるほど巨大な噴石が飛んでこない保証はないわけですが……。
いよいよ、この夏立ち入り禁止が解除された八丁ダルミから王滝山頂へ行ってみることに。
一木一草もない荒涼とした山頂部は、平日だったこともあって、人の気配もほとんどなく、異世界感満載。どこか見知らぬ惑星にでも来たような感じで、不思議な雰囲気です。
一木一草もない荒涼とした山頂部は、平日だったこともあって、人の気配もほとんどなく、異世界感満載。どこか見知らぬ惑星にでも来たような感じで、不思議な雰囲気です。
「活火山」に登るということ
霊峰・御嶽山は、千年以上に渡って人々に敬われてきた信仰の山。祈りの心をたずさえて、あるいは修行のために、古来より連綿と人々が登ってきた歴史があります。
夏には美しい花々が咲き、冬は白銀の世界となり、晴れれば雄大な景色が広がる、魅力あふれる山です。
そして、ロープウェイを利用すれば、ビギナーでも簡単に登れる3000m峰ということもあって、数ある名山の中でも、屈指の人気を誇っています。
そんな山で、9年前に突然噴火が起きて、山頂付近にいた人々が巻き込まれ、63名が帰らぬ人となりました。
よく、「登山は自己責任」と言われます。
リスクがあることを認識したうえで、敢えて行うことを「リスクの容認」あるいは「リスクの引き受け」と言います。登山にはリスクがある。危険な場所があって、滑落するかもしれないし、落石を受けるかもしれない。急な天候悪化で動けなくなるかもしれない。
このようなリスクは、山に行きさえしなければ遭わずに済むもので、絶対に遭難したくないなら山に行かなければいいのです。でも、山好きさんたちは、そのリスクを認識した上で山へ行きます。
滑落は、気を付けていれば、かなりリスクを下げることができます。落石も、注意深く行動すれば、ある程度は避けることができるかもしれません。
でも、火山の噴火は、自分ではどうすることもできません。
一般的な「山岳遭難リスク」と比べると、「噴火に遭うリスク」は、確率は限りなく低いものの、遭遇すると死ぬ確率はずいぶん高いかもしれません。
「突如火山が爆発して死ぬかもしれないリスク」を、「容認して」登るということを、自分はどれだけリアルに考えてここに来たのか?
リスクを、自分は容認したとして、もしここで噴火に巻き込まれて死んだとき、家族は「好きな山で死んだのだから仕方ないね」と納得できるのか。ずっとそんなことを考えながら歩いていました(【後編】へ続く)。