夜明け前の出発時には見えなかったものも
ついに10時間のトレッキングも終わりに近づいています。最初に橋の上で叫んでいたのは夜明け前。ということはもう少しで登山口に辿り着くはずです。時刻は14時半頃でした。
登山開始の頃はまだ真っ暗だったため見えていませんでしたが、ガイドさんが岩に生えた小さな白い花を指差しました。
「これはオオゴカヨウオウレンという、屋久島の固有種です。2~3月頃に見られます。小さいので見つけにくいですが、よく見ると春の間は森の至るところに咲いています」
たしかによく見ると、緑の苔に混じって梅の花を小さくしたような白い花がちらほらと咲いています。この花は、スギ林下の岩や木に咲くようです。屋久島の杉とともに生きているということでしょう。
15時過ぎ。ついに荒川登山口に戻ってきました。5時半から始まったトレッキングは、本当に10時間ぴったりで終わったのです。夜明け前に見た登山口の看板を再び目の前にして、ようやく帰ってきたという実感が湧きました。
最初は『もののけ姫』を目的として始まった旅でしたが、実際に縄文杉を目にし、森の中をガイドさんの解説つきで回ると、ぼんやりとした屋久島の情報がはっきりとしてきます。屋久島には樹齢1000年を越したスギがそこらに生えていることも、縄文杉を目の前にすると意外と感動しないことも、屋久島には固有種の花が咲いていることも、知りませんでした。
10時間登山は想像以上に過酷でしたし、想像していたのとは違っていた場面も多々ありました。でも、『もののけ姫』の舞台を充分堪能。結局は「来てよかった」と結論づけ、ホテルでうまい酒で祝杯を上げたのでした。
【参考】
■屋久島観光協会