夜明け前から登山開始! ひたすら闇の中を歩く
翌朝。お化けも眠る午前4時半にホテルに迎えのバスが来ました。この時間に出ないと、日の昇っているうちに帰って来られないからです。
ロビーでお昼が入った包みを受け取って、出発です。1時間ほどバスに揺られましたが、車内では当然眠ってしまったため、どういう道のりで登山口に辿り着いたのかはさっぱりわかりません。
このバスのチケットを購入する際に、山岳部環境保全協力金もあわせて任意で納入しました。山岳部環境保全協力金とは、世界遺産として評価された屋久島の自然環境と水環境を保全するための協力金です。協力者証として屋久島で植林した杉から切り出したキーホルダーをもらいました。
午前5時半に登山口に到着。ついに登山が始まりました。
今回利用した登山口は、「荒川登山口」です。縄文杉が目的の人が使う最も一般的なルートとされており、ツアー参加客は大抵この登山口を使っています。
このルートは、例年3月~11月末まで登山客で賑わうそう。道中、トロッコ軌道を歩いたり、ウィルソン株が見られたりと、メジャーな観光もできる王道コースです。
プランとしてはそれ以外にも、縄文杉を見たら引き返さずにそのまま先へ進み、さらに岩場が過酷な道を歩くルートや、縄文杉を見ずに、主に森の中を歩いて滝や歩道を歩くハイキングのルートなどもあります。
筆者たちが選んだプランはガイドさんが1人ついて案内してくれるという最もメジャーなプランでしたが、それでもかなり過酷でした。なぜなら、日も昇っていない真っ暗な道を、渡された懐中電灯の光のみを頼りに歩くからです。
踏み固められた土の道がほとんどでしたが、それでもほんの数センチ先しか見えない状況で歩き続けるのは不安にかられます。あまりに暗いため、時には「いるよね?」と声を掛け合うこともしました。
さらに眠気もまだまだ残っている体で進むため、「もし今急に走り出したら大怪我する」「暗すぎてゾンビが出てきそうな雰囲気だね」などと、友人たちと現実味のない話をしながらとにかく進みます。
しかしみんな眠たい状態なので、雑談のような和気あいあいとしたものではありませんでした。どんな道を歩いていたのか記述したいところですが、なにしろ真っ暗だったため、自分でもどんな風景だったのかさっぱりわかりませんでした。
気が付くと闇が明けていて──
「そろそろ日の出ですね。あそこの山間から、日が昇るので見てみましょう」
ガイドさんのその一言で、眠たい目をこすって顔を上げると、たしかに、かなたに見える山と山の間から、オレンジ色の光が見えはじめました。
筆者たちは、とにかく足場が不安だったので足元ばかり気にして下を向いて歩いていました。自分が歩いているのがどこなのかもわかっていませんでしたが、日が昇ると漠然と安心感が湧いてきて、ホッとするものです。都会で生活している時には感じられない気持ちでした。(中編へ続く)
【参考】
■屋久島観光協会