たおやかで優美な秋田の名山、秋田駒ヶ岳へ。前編では、八合目から登山を開始し、阿弥陀池まで。後編では、いよいよ山頂へと向かいます。
秋田駒ヶ岳の主峰に登頂! しかしそこは……
静かな山上の池、阿弥陀池のほとりまで来たところで、なんだか雲行きが怪しい感じに。そして、いきなり空気感が変わって、冷たい風が。さ、寒いんですけどっ……
今日って、そんな天気予報じゃなかったはず。これってもしかして、「ナントカ心と秋の空」ってやつですか…? いや、風の冷たさは真冬並み。
ともあれ、山頂はすぐそこ。寒風吹きすさぶ中、男女岳の山頂へと向かいます。
木階段が設置され、緩やかで歩きやすい登りではあるのですが、強風が吹いているため、トレッキングポールも駆使してバランスを崩さないよう慎重に登っていきます。
秋田駒ヶ岳の主峰、男女岳(1637.1m)登頂!
が、しかし! 360℃の眺望が楽しめるという山頂はどこですか?
10月中旬なのに、真冬みたいなこの景色は何なんですか?
ガッスガスの山頂。岩の表面に「エビの尻尾」ができてるし!
氷点下で強風が吹いているとき、細かい水の粒子が岩や樹木にぶつかって凍結し、まるでエビの尻尾のようなかたちに成長していく「霧氷」という現象です。
風上に向かって徐々に伸びていくのですが、見ているうちにエビの尻尾がどんどん伸びていく……そりゃ寒いよ! 真冬かよ!
吹雪の中を乳頭山へ向かって出発したものの……
この日の計画は、八合目から阿弥陀池、男女岳を経由して、湯森山、笊森山と縦走し、乳頭山から乳頭温泉郷へ下るというもの。岩手県と秋田県の県境を成す尾根伝いに縦走していくコースです。
阿弥陀池の避難小屋から、横岳(1582.5m)へ登り、湯森山方面へ歩き出したものの、天候はさらに悪化。この先はずっと尾根道で、さほど危険な場所はなさそうですが、吹きっさらしの稜線を進むことになります。
低温と強風。吹き付ける霧混じりの風は、レインウェアをしっかり着込んでいても、容赦なく体温を奪っていきます。そうこうするうちに小雪が舞いはじめ、完全に冬の様相。もしかすると雪が積もるかも……。
天候悪化の気配を感じたときから、スマートフォンで頻繁に雨雲レーダーを見ていたのですが、その後も雨雲(雪雲?)が断続的に押し寄せてくる予報。乳頭山までは、あと3時間ほどながら、ずっと稜線歩きなので、かなり辛い行程となりそうです。
積雪の可能性は想定していたので、登山靴に装着する滑り止めギア「チェーンスパイク」は持っていますが、この風はちょっとアカンやつかも。とりあえず、風を避けるため、稜線を外して下ることに。
稜線から少し下ると、そこはもう別世界。真冬のような極寒の世界から、のどかな秋山へと一気に戻りました。強風時、稜線から少し離れるだけで、風の影響は弱まることが多いのです。
とは言え、足元を彩るコケや草木に、はらはらと舞い落ちる小さな雪粒が付着しています。強風下の稜線ではそんな余裕はないのですが、風さえ吹かなければ、今年初めて見る雪を楽しむ余裕も出てくるのでした。
朝出発した八合目の避難小屋に舞い戻ると、地元の方々が小屋閉めの作業をされていました。なんと、この日で避難小屋は閉鎖。そして、「この天候だと、早く下りないと道路が凍結して危ないよ」と言われ、ふと朝のタクシーの運転手さんの一言を思い出し、電話をかけました。
「迎えに来て下さーい!」