森の哲学者と呼ばれ、ときには知恵と学問のシンボルとしても扱われることがあるフクロウ。フワフワとしてユーモラスな印象もありますが、実は鋭い爪を持った猛禽類でもあります。最近はフクロウカフェなんかもよく見かけ、親しみのあるフクロウについて掛川花鳥園の運営管理部課長・学芸員 バード統括兼広報担当の北條龍哉さんにお話をうかがいました。
フクロウの大きな頭のほとんどは眼球なんです
「フクロウは特徴的な鳴き声もあり、昔から日本人にも親しまれてきました。大きな目とずんぐりとした体が印象的で、世界では200~250種類ほどのフクロウがいるとされています」(北條さん)
フクロウといえば「森の哲学者」とも呼ばれ、知恵の象徴のように言われることがありますが頭のいい生き物なのでしょうか。頭の大きさもほかの鳥類に比べると大きく、知的な印象を受けます。
「確かに何かをじっと考えているような、知的な印象を見た目から感じますよね。でも、フクロウは他の鳥とさほど知能は変わらないと思います。頭が大きいと脳みそが多くて頭がいいのではないかと思いますが、例えばフクロウよりもスリムなタカなどと、さほど変わらない印象ですね。そもそも、あの大きな頭ですが、ほとんどが目なんです」(北條さん)
目も耳も顔も夜のハントに特化した姿に進化した
なぜそんなに目が発達しているかというと、夜に狩りをするためなのだとか。
「ほとんどのフクロウは夜行性で夜に狩りをしますが、夜の闇の中でも獲物を見つけて確実にしとめるために、あのような特徴的な容姿をしているんです」(北條さん)
大きなフクロウの目ですが、視力は人の8~10倍と言われ、動体視力も優れているといいます。
「目が正面に付いているのも大きな特徴ですが、目が正面にあると立体視ができ、獲物までの距離を正確に計測することができるんです」(北條さん)
首を「くるん」と回すのには理由があった
ただし、目が正面を向いているうえ、眼球が眼窩に固定されているため動かせず、視界がとても狭くなっています。そこで、首をくるっと回すことで周囲を見られるようにしているのだとか。
「フクロウの特性は目だけじゃないんです。音に対する感覚もすごくて、羽に隠れている耳が小さな小さな音もちゃんと拾い、音までの距離を測るんです。だから獲物になるような生き物がちょっとでも音をたてれば、逃しません」(北條さん)
なぜ、距離を瞬時に測れるかといえば、耳の位置が関係しています。フクロウの耳は左右で位置が異なり、音が左右の耳まで届くまでの時差によって、獲物がいる位置をキャッチすることが可能になります。
「また、フクロウといえば平面の顔が印象的ですが、あれも音を拾うためにとても適しているんです。顔がパラボナアンテナの役割となり、どんな小さな音もキャッチするんですね」と北條さん。
さらに、位置を把握したら相手に気づかれないように近づくことが可能です。
「種類によって若干差があるのですが、羽音がほとんどしないのもフクロウの特徴です。羽の先がぎざぎざになって空気を逃がすことができるので、羽ばたきの音がほとんどしません。夜、フクロウに狙われたら、ほぼ確実に捕食されてしまいます」(北條さん)
日ごろはずんぐりとかわいいフクロウですが、夜の顔は優秀過ぎるハンターということのようです。