気象庁が発表した2023年9月~11月の3カ月予報によると、気温は平年より高くなる傾向を予測しています。秋の行楽といえば、まさに登山が主役メニューのひとつ。朝晩こそだいぶ涼しくなってきてはいますが、まだまだ「熱中症」対策、怠ってはなりません。
夏が過ぎても続く「熱中症」の落とし穴
東日本は暑さがだいぶ落ち着いてきました。熱中症は暑い夏だけのものと思われがちですが、涼しくなれば大丈夫ということではありません。これからの季節は「隠れ脱水」の危険が迫ってくる可能性が高いのです。自覚のないままにカラダから水分が失われて、水分不足に陥る心配があります。
【日本救急医学会による熱中症とは】
日本救急医学会が熱中症の症状を以下の3類に分類しています。2015年に発表され、以下の3分類で熱中症の症状危険度を提示しています。
・l度:めまい、立ちくらみ、生あくび、発汗、筋肉痛、筋痙攣など
・ll度:頭痛、吐気、嘔吐、全身倦怠感、軽度の意識障害など
・lll度:高度の意識障害、小脳症状、痙攣発作など
かいた汗の分の補充として“スポドリ”のススメ
熱中症や脱水症状の対策として、まずは水分不足をあげます。登山をしている限り、たとえ冬でもそれなりの量の発汗をしています。筋肉痛やこむら返りなどの運動機能の低下、そして体質にもよりますが高山病の原因になるのが水分不足です。
ただ対策として水を補給し続ければいいというものでもありません。汗を補充するという認識が必要なのです。汗にはナトリウムやカリウムが含まれており、必要分のそれらミネラルを補給することでカラダのバランスを保てるわけです。
水分補給ファーストが巷でよく言われるスポドリ、つまりスポーツ飲料です。ナルゲンボトルや水筒に顆粒を溶かしておいて、いつでも取り出せるようにしておくのはもちろん、登山前にコンビニや自販機等で購入できる環境であれば、冷えた状態のものを確保できるメリットがあります。
“経口補水液”と“スポドリ”の違いって何?
スポーツドリンクと似た飲料の「経口補水液」も、脱水症状の対策では見落とせません。経口補水液は医学的知見から配合された飲料で、水分・塩分吸収に優れています。スポーツドリンクとの違いはナトリウム分量です。
スポーツドリンクの方がナトリウムの濃度が低く、経口補水液の方が高いということです。つまり登山においての水分補給はスポーツドリンクが予防対策としても適しており、脱水症状に陥ってしまった、ないしはその恐れがあるなど喫緊な場合は経口補水液がふさわしいということになります。
【必要な水分量ってどれくらい?】
ひとつの計算式があります。
体重(kg)×行動時間(h)×5(係数で単位はml)
です。
体重60kgの人が往復で5時間のルートをハイクしたとして1500mlが必要な水分量となる、というものです。500mlのペットボトル3本と考えれば、うち2本はスポドリで1本はミネラル、というような振り分けもしやすくなりますね。
また当日、自宅を出るときから登山スタート前までに300~500mlを飲んでおくことで予防につながる、とも言われています。
でも“スポドリ”って甘いよね?
スポーツ飲料系の味付けが妙に甘いと苦手にしている方もいるようです。では薄めて飲むのはどうでしょうか。
糖質濃度が2.5g/100mlを下回るまで薄くすると、かえって水分の吸収率が下がってしまいます。スポーツ飲料系は水分もですが、ミネラル補給をするために成分配合されているので糖分だけでなく、塩分も薄くなってしまうため熱中症対策の観点から言うとお薦めいたしかねます。
マイボトルに補充する際は、顆粒パッケージ記載量と水分量との指示を守った方が有効ですね。