シュノーケリングをしながら海中をパシャリ
砂ではなく、大きな石でできている浜辺なので、少し高い波が来ると、波にさらわれた石同士がぶつかってカラカラ鳴る音が聞こえます。カラカラ、カラカラ、心のざらっとした部分まで波にさらわれてきれいになる感じがします。
今日はせっかく魚が近くにいるので、シュノーケリングをします。
シュノーケリング中、顔はずっと海の中なのに、息ができるので変な感じ。やっぱり浅瀬でも、いろんな魚や小さなカニがいます。
近くでシュノーケリングをしている子どもが「大きい魚いたよ!」と海辺の父親に向かって声をあげました。
暑い日なので、冷た過ぎない海の温度も心地よく、足ひれをゆっくり動かしながら、いつまででも魚を眺めていられます。
途中で立ち上がって海辺のほうを見ると、友人が筒状の浮き輪にもたれて、浅瀬でぷかぷか漂っていました。
友人のように浅瀬でのんびり漂っているだけというのも、地元の大人の遊び方という感じがして、ちょっといいですね。
いるか浜の海は、足のつく浅瀬が結構長く続くので、安心して広々と探検できます。
川奈の魚は人間が近づいても、あまり驚かずに悠々と泳いでいるので不思議です。
青い小さな魚たちが集団で泳いでいたり、カニが石の上を歩いていたり。こちらまでゆったりした気持ちになります。
思えば20代の頃は、こんな風にゆっくり海に浮かんでいることができなかったような気がします。
海に沈むのが怖くて、怖くなると慌てて、本当に体が沈んでしまって。
日常生活で気分が沈んだ時も、大事なのは無理に抵抗しないことです。
辛くなったら眠る。眠ってしまう自分を責めない。そうして気分の波をやり過ごすのです。
日々のそういう練習の積み重ねで、今年は海にのんびり浮いていられている気がします。
小さなカニが恥ずかしそうに、石と石の間に隠れました。
Mちゃんに借りた水中カメラで魚たちを撮ってみます。
毎年ぼんやりとしか水中を見ていなかったのですが、ゴーグルをつけるとこんなに可愛らしい魚たちが見れるとは。
いつもはシュノーケリングの道具とか水中カメラとか、なんにも持ってこないから、今年はいい思い出になりました。
たくさん泳いだあとは地魚のお刺身を
海から上がって、海辺に腰をおろします。
体が濡れていると、風が吹いているのがよくわかります。すぐに体が乾いてしまいそうなほど、カラッとした夏の風です。
友達と別れて、ワンピースに着替えて、近くの「海女の小屋 海上亭」でお昼ごはん。
私はさざ波丼という名前の、きれいな地魚の刺身が、さざ波のように盛り付けられている丼にしました。アジ、ブリ、マグロなどが、さっきまで泳いでいた海の波のようにごはんの上にのっています。
泳いだ後の心地よい疲労感に、地魚のおいしさと栄養が染み渡っていきました。
窓からは晴れて光っている川奈の海が見えます。
来年の夏も、また遊びに来られますように。
【プロフィール】
姫乃たま
1993年、東京都生まれ。10年間の地下アイドル活動を経て、2019年にメジャーデビュー。同年4月に地下アイドルの看板を下ろし、現在は文筆業を中心にラジオ出演や音楽活動をしている。
2015年、現役地下アイドルとして地下アイドルの生態をまとめた『潜行~地下アイドルの人に言えない生活』(サイゾー)を出版。著書に『職業としての地下アイドル』(朝日新聞出版)『永遠なるものたち』(晶文社)など。音楽活動では作詞と歌唱を手がけており、主な音楽作品に『パノラマ街道まっしぐら』『僕とジョルジュ』などがある。