意外と貴重!? 野生のスズムシ
鳴く虫として一番よく知られている割に、なかなか見つけにくいのが「スズムシ」だそうです。
坂本さんによると、「源氏物語の頃から親しまれてきた虫なのですが、なかなか〝天然もの〟には出会えません。ホームセンターなどで普通に市販されているので、飼ったことがある人は少なくないかもしれませんが……」
自然界ではなかなかお目にかかれないというスズムシ。飼うのは難しくないのでしょうか。
「そんなに難しくはありません。餌はナス、人参などの野菜と、煮干しや鰹節などのたんぱく質系。金魚の餌でも育てられますよ。
スズムシは、繁殖期になるとオスが求愛のために鳴くのですが、10月頃には産卵を終えた成虫たちはみんな死んでしまい、卵で越冬します。翌年の初夏に孵化するので、その頃までは卵が入った土の管理だけで、あまりお世話も必要ありません。」(坂本さん)
伊丹市では、毎年中心市街地で鳴く虫を楽しむイベントを実施しているほか、虫たちの里親を募集して、翌年孵化した次の世代を持ち寄ってもらうという里親プロジェクトを行っています。
飼育方法などの相談にものってもらえるようです。
日中はまだまだ暑くても、さすがに夜は涼しくなってきました。
そして、うるさいほどに鳴いていたセミに代わって、涼しげな秋の鳴く虫たちが主役の季節。秋の夜長、平安の昔からの伝統に思いを馳せて、風流な「虫聞き」を楽しんでみてはいかがでしょうか。
【取材協力】
■坂本昇(さかもと のぼる)
プロフィール:伊丹市昆虫館館長、学芸員。専門分野は博物館教育で、伊丹の地域性を活かしたイベント事業「鳴く虫と郷町」などを担当。各種昆虫飼育を担当してきたほか、昆虫の文化などにも興味があり、昆虫食の展示や事業も担当している。
■伊丹市昆虫館