満月の夜に「夜潮」の湯浴み
ここは〝式根松島〟と呼ばれる美しい岩礁地帯の海岸線にあるため、ダイナミックな磯浜の景色を満喫できた。
足付温泉には地鉈温泉や山海温泉のような、いたるところからあふれ出るような湧出量はなく、源泉の湯温も50度ほどで海水が多く流入するとぬるくなる。そのため、干潮時の数時間前後が適温だ。
山海温泉や地鉈温泉と同様、ここも〝湯加減は潮次第〟の海の温泉なので、潮の満ち引きによって適温になる湯船は異なってくる。適温の移動しながら湯船のはしごを楽しんだ。
また、足付温泉は向かう途中のハイキング道に、トイレや脱衣スペースまであって便利。そして近くの集落からはサンダル履きでも来られるほどアクセスがいい。暗い中でも比較的安心してたどり着くことができるので、夜でも入湯できる貴重な野湯でもある。
せっかくなので夜にもう一度訪れ、満月の夜にちょっとロマンチックな湯浴みを体験してみた。地元の人々は月を見ながら入湯することを「夜潮」というらしい。
このように式根島は海の野湯があちこちにあり、我々野湯マニアにとってはパラダイスの島である。まだ知らない未知の野湯を求めて、ぜひ一度、式根島を探検していただきたい。
※一部に私有地を含む場合がありますので、野湯を訪れる際は事前に許可を取ることを推奨します。
【データ】
■地鉈温泉
東京都新島村式根島1006
野伏港から徒歩で約40分
■足付温泉
東京都新島村式根島1006
野伏港から徒歩で約35分
【プロフィール】
瀬戸圭祐(せと・けいすけ)
アウトドアアドバイザー、野湯マニア。NPO法人・自転車活用推進研究会理事。自動車メーカー勤務の傍ら、自転車・アウトドア関連の連載、講座などを数多く行っている。著書に、全国各地の野湯を訪ね歩いた冒険譚『命知らずの湯』(三才ブックス)、『快適自転車ライフ宣言』(三栄)、『雪上ハイキングスノーシューの楽しみ方』(JTBパブリッシング)などがある。2023年9月現在、足を運んだ野湯はトータルで約100湯。
※著者の野湯の講演会、開催決定!
開催日:2023年11月19日(日)