まずは近所の公園で〝小さな一歩〟から
アウトドア活動を行う際には、あらかじめ日程やタイムテーブルを組んだり、持っていくものを選んで準備したりと、さまざまなプランニングや段取りが必要になります。
「これは『実行機能』といって、目的を達成するために自分の思考や行動をコントロールする認知システムを高める効果があります。この実行機能は脳の前頭前野が司り、児童期から思春期に発達します。
また、アウトドアでは天候や自然現象に左右されることも多く、臨機応変に予定を変更したり、柔軟に対応したりする状況判断が必要になります。時には段取り通りにいかなかったり、失敗したりすることもあるでしょう。これも対応力やレジリエンス(回復力)を身につけるきっかけになります。
さらに、自然と向き合うことで『ゲームと違って、自分ではコントロールできないことがあるのだ』とわきまえることができます。これは生きていくうえでとても大切なことだといえるでしょう」
子どもをアウトドアに連れていくと、挙げればきりがないくらいメリットがあることがわかりました。ただ、これまでアウトドアに無縁だったり、苦手だったりする場合は、どうすればいいでしょう?
「いくら子どもの育脳に効果があるといっても、いきなりフル装備で泊まりがけのキャンプに出かける必要はありません。あまりハードルを高くすると、1回で疲れてしまって続かない可能性があります。まずは子どもと一緒に近所の公園を散歩することから始めましょう。そこから、やや遠くの自然公園、低い山、キャンプへと、『スモールステップ』で少しずつ慣らしていって、習慣化することをお勧めします」
【プロフィール】
瀧 靖之(たき・やすゆき)
1970年生まれ。東北大学加齢医学研究所教授。脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達、加齢のメカニズムを研究。著書に『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える 「賢い子」に育てる究極のコツ』(文響社)、『アウトドア育脳』(山と溪谷社)など。