四季を感じる草花図鑑 vol.03 美しさと繁殖力のいずれもケタ違い【タカサゴユリ】

楽しい外遊びはソトラバで。アウトドアWEBメディア Soto Lover

  • お盆前後に圧倒的な勢いで咲くタカサゴユリ
  • タカサゴユリ
  • タカサゴユリのタネ
  • 蒴果
  • タカサゴユリ
  • タカサゴユリ

7~9月頃にかけて、高速道路脇などで大量に咲いているのを見かける白いユリ、それが「タカサゴユリ」です。台湾原産で、大正時代の終わりごろに観賞用として移入したものが、いつしか花壇から逸脱して、圧倒的な勢いで分布域を広げています。

可憐で美しいユリは世界中で愛される花

華やかで美しい花を咲かせる種が多いことから、ユリは園芸商品として非常に人気のある花です。

ユリの原種は世界に約100種、日本原産のものは15種類あります。日本のユリは、中世頃からプラントハンターによってヨーロッパにもたらされ、たいへんな人気を博したそうです。

なかでも、「テッポウユリ」という純白の花を咲かせるユリは、キリスト教圏の人々から、聖母マリアを象徴する「マドンナリリー」として人気が高かったとか。

薄くて軽いタネを風で飛ばし分布を広げる作戦

タカサゴユリは、夏の暑い盛りに花を咲かせ、秋頃にタネを作ります。

花のあとにできる、緑色のバナナみたいなさや(蒴果=さくか)の中には、驚くほどたくさんのタネが入っています。

ひとつの蒴果に詰まっているタネは、なんと約700~1000個。タネといっても、非常に薄く、ペラペラのポテトチップスみたいな感じです。

日本原産のユリの場合、ひとつの花からできるタネの数は、テッポウユリで約200~300個、「ヤマユリ」や「ササユリ」で、多くても150個程度。それらに比べると、タカサゴユリのタネの生産力は桁違いです。

薄くて軽いタカサゴユリのタネは、風に乗って遠くまで旅をすることができます。しかも、土があまりないなど、かなり条件が悪いところでも発芽する能力を持っています。

このため、風で運ばれやすい高速道路沿いなどに増えてきているようです。しかも、ほかのユリと比べて格段に成長が早いことも、分布域の拡大に一役買っているようです。

筆者が自分のフィールドで観察している範囲では、ここ10年くらい、数もかなり増えています。本来は夏の花なのに、真冬に咲いている株をみかけることもあって、その生命力に驚かされます。

  

TOP