まだまだ暑い日々が続いていますが、暦の上ではもう秋。実際、秋の花もちらほらとみられる時期になりました。
今回は、この時期にみられる花で、街中の空き地などでもよく茂っている「クズ」についてご紹介していきます。
日本では万葉の昔から親しまれてきた植物
クズは、可憐な花を咲かせる、マメ科クズ属のつる性植物です。万葉集の和歌にも詠まれ、秋の七草にも数えられます。
高貴な風情を漂わせる深い紫色の花は、顔を近づけると、ほんのりとかぐわしい香りを放っています。

地面の下には、大きな葉っぱが光合成によって生産した栄養をたっぷりと蓄えた、大きな根茎があります。
その根を精製して、でんぷんを取り出したものが「葛粉」で、和菓子などに使われる高級食材です。
クズの根だけを原料とした葛粉は、「本葛」と呼ばれています。原料に甘藷でんぷんなどが使われている安価な葛粉とは、品質も全く違うものです。
この本葛で作られる冷たい和菓子が「葛切り」。独特の風味があり、しっかり冷やして、つるんと食べると、暑い季節も悪くないなぁと思える夏の涼味です。

また、クズの根は古くから薬としても利用されてきました。
その名の通りの「葛根湯(かっこんとう)」は、数ある漢方薬のなかでももっとも親しまれているもののひとつではないでしょうか。ただ、自生するクズの根を掘るのはたいへんな作業なため、掘り手は年々減っているといいます。
一方、生育が旺盛すぎて、ときに邪魔者扱いされることもあるクズの「つる」からは、良質の繊維が採れます。
これを使って織り上げた生地が「葛布」で、丈夫で水にも強いことから、古くは武士の乗馬袴地に使われていたとか。今でも、ナチュラルな風合いが好まれ、伝統工芸として静岡県の掛川などで作られています。

クズの花からは、その花びらの紫色を活かした、「花あめ」というお菓子を作ることができます。とても美しく、作ってみたくなるお菓子。こちらの記事で取り上げた、花を使ったスイーツの作り方を紹介している本『野草がハーブやスパイスに変わるとき』に載っています。