終わりが見えないような猛暑が続いていますが、夜風や虫の声などに、ちらほらと秋の気配も。少しずつ、でも確実に、季節は移ろいでいます。
そこで今回は、初秋に見られる花をご紹介しましょう。秋の七草のハギとよく似ていて、それよりも少し先に咲き始める可憐な花、「コマツナギ」です。
小さくて可憐だけど力持ち?
コマツナギは、マメ科コマツナギ属の落葉小低木。高さは70~80cm程度にしかならない、きゃしゃな感じの植物です。
とても木には見えませんが、草の仲間=「草本」ではなく、木の仲間=「木本」です。
本州から九州にかけて広く分布し、草地や道端、川べりなど、わりとどこででも見かける植物です。
枝はほっそりとしているのですが、とても丈夫で、コマツナギは「馬(=駒)をつないでも切れない」というところから名前がついたのだとか。
ただ、枝でつなぐより、「葉っぱが美味しいので、コマツナギが生えているところに連れてくると、馬の足が止まる」という方が、実際の状況に近いような気もします。
秋の花の走りとなるハギの仲間
秋の七草のひとつ「ハギ」。野山には、「ヤマハギ」や「マルバハギ」など、自生種のハギの仲間がいろいろと生えています。
これらはいずれもマメ科で、コマツナギとはわりと近い種類です。
お寺など、ハギの花の名所は各地にたくさんありますが、登山道の脇でも普通に見られる、ありふれた植物です。
これらは、コマツナギが最盛期を迎える頃、追いかけるように咲き始めます。
独特でおもしろい形状をしたマメ科特有の花
マメ科植物は、一部の例外はありますが、そのほとんどが独特の形をした「蝶形花(ちょうけいか)」と呼ばれる花です。
コマツナギもまさにそうで、正面から見て上方の、一番目立つ花びらが「旗弁(きべん)」、その下側に「翼弁(よくべん)」、「舟弁(しゅうべん。竜骨弁とも言う)」が左右にそれぞれ2枚ずつあり、計5枚の花びらで形成されています。
旗弁は、虫を呼び寄せるための役割を持っていて、大きく、華やかで美しい色をしています。
飛んできた虫が蜜を吸うために翼弁の上に乗ると、その刺激で、舟弁の中に隠れていたおしべとめしべが跳ね出し、蜜を吸っている虫の腹に花粉をつけます。と同時に、その虫がほかの花でつけてきた花粉をめしべにつける、という仕組みを持っています。