旅の本屋「のまど」の店長が、店頭に並ぶ本のなかから、外にでかけてみたくなるキャンプ・アウトドア好きのための本を選びます。今回は、歩いてお遍路を巡った旅の記録を、著者のキャラクターがにじみ出た文章と、ほのぼのイラストで綴った一冊をピックアップ。香川県出身の評者が注目するポイントもお楽しみに。
老若男女・海外からも人気の巡礼路
本書は、30歳の春に仕事を辞めた著者が、自らを見つめ直すために、野宿しながら雨の日も猛暑の日も46日間かけてひたすら歩いた四国八十八ヶ所を巡るお遍路旅を、イラストとともに日記形式で紹介した1冊です。四国八十八ヶ所巡りは、弘法大師(空海)にゆかりのある四国八十八ヶ所霊場である88ヶ所のお寺を参拝することです。別名「お遍路」や「お四国さん」、「八十八箇所」「本四国」ともいわれ、現代に伝わる四国を代表する文化の一つでしょう。
目的としては、88ヶ所のお寺を巡ることで「自らの煩悩を払い清め、自分自身の行いを見つめなおすこと」といわれていて、近年は年配の人だけでなく、若い人や海外から来てお遍路をする人も増えてきているようです。
4歳から18歳までを香川県で過ごした私にとっては、「お遍路さん」というのは実に身近な存在で、子どもの頃に白装束に身を包んだ歩き遍路をしている人を何度も目にしたことがあります。
また、実家が真言宗ということもあり、真言宗の開祖である弘法大師のことは身近な存在でした。四国という土地では、日常生活のなかにお遍路さんも弘法大師もごくごく自然に入り込んでいた気がします。
野宿情報や使ったお金など事細かに綴る
著者は、そんな四国八十八ヶ所を巡る1139kmの距離を46日間かけて「通し打ち」(一度の旅で、ほぼ徒歩で走破すること)しています。本書の特徴としては、まず日記形式で初日から46日目までに起きた出来事を詳細に記していることでしょう。
毎日書いている手描きマップでは、その日歩いたルートを記録。また、一日に使ったお金の詳細も事細かに紹介されているので、ルート上にどういった施設があって予算的にどれくらいかかるのかが一目でわかるようになっています。実際にお遍路をする人にとってためになるガイドブック的な使い方も出来るのがポイントです。
また、著者は約3日に一度、野宿をしているので、野宿を実際にする際に知っておきたい持ち物の情報や、おすすめの場所、注意事項などもイラスト付きで掲載されています。おすすめの寝場所としては、雨や夜露をしのげて快適な東屋やへんろ小屋など。リュックに洋服を挟んでクッション性を確保すれば枕に変身など独自のアイデアもあり。費用を節約するために野宿をしながら歩き遍路を計画している人には、貴重な情報になるはずです。