アウトドアでは、必然的に昆虫と出会う機会が多くなります。昆虫少年や虫愛ずる姫君じゃなくても、昆虫って観察してみると、意外とかわいらしく見えてくるものです。
このシリーズではそんな、ちょっと気になる虫たちについて、昆虫の専門家にお話をお聞きしていきます。
今回は、遭遇してしまうと危険な虫について。遭わないのが一番ですが、遭ってしまったときのために、どんな虫が危険なのかを知っておくことは大切です。
できれば遭遇したくない危険な虫とは?
夏のアウトドアで一番イヤなのは吸血虫ではないでしょうか。かゆいだけならまだしも、近年、いろいろな病気を媒介するやっかいなヤツもいます。
ビル・ゲイツ財団が2016年に発表したデータによると、人間を最も多く殺している生物の 1番目は「蚊」だそうです(ちなみに、2番目は「人間」)。
蚊は吸血するだけではなく、マラリア、ジカ熱、西ナイル熱、デング熱などの感染症を媒介し、それが原因で年間約72万人以上の人が亡くなっているそうです。
今のところ、日本には危険な感染症を媒介する蚊はそれほどいませんが、このまま温暖化がさらに進むとどうなることやら……。
それはさておき、キャンプなどでこれからの季節に気をつけるべき昆虫について、伊丹市昆虫館の坂本館長に教えていただきました。
夏の終わりから秋にかけて危険度を増す「ハチ」
「ハチは非常に種類が多い昆虫で、地球上に30万種以上。日本にはそのうちの5000種以上が生息していると言われています。
しかし、毒針を持っていても、積極的に攻撃してくるハチは限られていて、攻撃する場合は巣を守るためなどやむを得ないときだけです。身近なミツバチやアシナガバチ、スズメバチの仲間は巣に近づきすぎるなどの刺激を与えると攻撃してくることがあります」。
「体長が3cmくらいある、世界最大のスズメバチ『オオスズメバチ』、都市部でも生息していて、攻撃性も高い『キイロスズメバチ』など。
巣に近寄らないのが一番ですが、知らない間に近づいてしまい、ハチに敵認定されてしまうこともあるので注意が必要です。
オオスズメバチなどは巣に敵が近づいてきたら、顎をカチカチと鳴らして威嚇行動をし、立ち去らない敵に対しては攻撃をかけることがあります。
繁殖期である9月~11月頃が、最もスズメバチに刺されるリスクが高まる季節です」(坂本さん)
ハチに襲われそうになったら「平常心」!
坂本さんがいうには、「ハチが攻撃してきたときに一番ダメな対応は、パニックを起こして騒ぐこと」だそう。
「大声を出したり、追い払おうと手を振り回したりすると、ハチを刺激してしまい、攻撃される可能性も高くなります。
難しいかもしれませんが、『平常心』を保って、慌てず騒がず、ゆっくりと後ずさりして、現場から立ち去りましょう。早い動きはハチを刺激するのでNGです」と坂本さん。
ハチの活動が活発になる時期は、刺激となる香水や匂いのある化粧品、整髪料などを使わないこと、黒っぽい衣服や帽子は避けた方がいいとされています。
しかし坂本さんによると、「スズメバチが黒色のものを攻撃するかどうか、はっきりわかりません」。
ただ「〝危険かもしれない〟と言われていることを、あえてすることはないのではないでしょうか」とのことなので、黒ではない色の帽子をかぶるなどしておくといいかもしれませんね。