アウトドアでは、必然的に昆虫と出会う機会が多くなります。昆虫少年や虫愛ずる姫君じゃなくても、昆虫って観察してみると、意外とかわいらしく見えてくるものです。
このシリーズではそんな、ちょっと気になる虫たちについて、昆虫の専門家にお話をお聞きしていきます。
今回は、伊丹市昆虫館の館長で学芸員でもある坂本昇さんに、夏から秋にかけてよく見られる、バッタについて教えていただきました。
つかまえやすくて愛嬌がある原っぱの人気者「バッタ」
河川敷の原っぱや、山の草地などを歩いていると、足元からぴょんぴょんと飛んでいくかわいらしい昆虫、バッタ。世界ではおよそ1万5000種、そのうち日本には約390種が生息しているとか。
「体の色では、大きく分けて緑色のタイプと茶色のタイプがあり、生息場所は裸地のような場所から草原に棲むもの、林縁に棲むものなど種によって好みがあります。顔つきでは、トノサマバッタのように丸いお面のような顔のタイプと、オンブバッタのように三角の長い顔のタイプがいます」(坂本さん)
ちなみに、昭和の子どもたちを熱狂させた「仮面ライダー」の1号、2号は、上の写真のトノサマバッタがモチーフです。
キリギリスやコオロギもバッタの仲間
「バッタ」と聞いて思い浮かぶのは、トノサマバッタやショウリョウバッタですが、「実はキリギリスもコオロギも同じバッタ目の仲間です」と坂本さん。
「いずれも後ろ脚が非常によく発達していて、すばらしい跳躍力を持っているのが特徴。トノサマバッタの場合、後ろ脚とともにハネも上手に使うので、ひと跳びで数十mも飛ぶこともあります。
とは言え、トンボのように高速で飛行するわけではないので、初心者でもつかまえやすい種も多くて、昆虫採集デビューにはぴったりかもしれません」(坂本さん)
人間からすると目と耳がとても不思議
小学生の頃、昆虫の眼は「複眼」だと教わった筆者。しかし、「バッタは、複眼と単眼の両方を持っており、顔の左右にそれぞれ複眼、真ん中に単眼があります」と坂本さんはいいます。バッタの眼には、世界はどんな風に見えているのでしょう。
またバッタは、人間からすると、耳も不思議なところにあります。
「バッタの顔を見ても、耳のようなものは見当たらないのですが、じつは耳(聴覚器官)は腹部にあります。外敵を察知するために聴覚を使っているほか、仲間とのコミュニケーションにも利用しているようです。
たとえば、ショウリョウバッタのオスは「キチキチ」と鳴きますが、ほかにも鳴くバッタはいて、オスだけが鳴くものとしては、ナキイナゴ、ヒロバネヒナバッタ、クルマバッタモドキ。トノサマバッタは、オスもメスも鳴きます。
後ろ脚の太ももと、前翅(ぜんし)の表面の脈をすりあわせて音を出していて、鳴く虫でも、スズムシやコオロギとは少し違う仕組みです」(坂本さん)