海から〝幻の海中温泉〟が出現!
山海温泉を存分に楽しんだら、もう少し奥へ進んで、その先にある海をじっと見つめる。
じつはこの海原の下には〝幻の海中温泉〟が存在するらしい。山海温泉の別名が舟入湯(ふなりっと)温泉なので、その奥にあるこの温泉は「奥ふなりっと温泉」と呼ばれている。
海中にあるので普段は湯船の場所がわからないが、年に数回ある大潮の干潮のピーク時にのみ、海の中から湯船が現れるという。滅多にお目にかかることも入湯することもできない、まさに幻の温泉。
今回はこの大潮の干潮を狙ってきたわけだが……。まだその姿は見えない。
諦めずに1時間ほど待ってみる。するとなんと運がいいことに、海から「奥ふなりっと温泉」が出現する瞬間に立ち会うことができた!
ほんのわずかな時間しか出現しないので、海から出てきた瞬間にすぐに入湯。
目の前に多くの小島が浮かび、その向こうに太平洋の大海原が広がる最高の眺めである。海と湯船が完全なるシームレスで、まるで海に浸かっているような絶景温泉だ。
数あるこの島の温泉のなかでも、この湯船からの海の景色は最高に素晴らしい。
また、入ってみてわかったが、どうやらここは海底の石の下から、源泉がポコポコ湧き出しているようである。後から聞いたところによると、地元の温泉好きの方々が干潮時に海に入って底の石を積み上げ、海中に湯船を作ったのだそうだ。
潮見表を読んで、大潮のなかでも潮位の変化の大きな日と時間を選び、風が弱く波が穏やかな日にチャレンジしてみてほしい。
もし入湯できれば、本当にラッキー。きっと生涯忘れられない入湯の思い出になるだろう。
※一部に私有地を含む場合がありますので、野湯を訪れる際は事前に許可を取ることを推奨します。
■山海温泉
東京都新島村式根島1006
野伏港から徒歩で約40分
■奥ふなりっと温泉
東京都新島村式根島1006
野伏港から徒歩で約40分
【プロフィール】
瀬戸圭祐(せと・けいすけ)
アウトドアアドバイザー、野湯マニア。NPO法人・自転車活用推進研究会理事。自動車メーカー勤務の傍ら、自転車・アウトドア関連の連載、講座などを数多く行っている。著書に、全国各地の野湯を訪ね歩いた冒険譚『命知らずの湯』(三才ブックス)、『快適自転車ライフ宣言』(三栄)、『雪上ハイキングスノーシューの楽しみ方』(JTBパブリッシング)などがある。2023年8月現在、足を運んだ野湯はトータルで約100湯。