災害級の猛暑が続いていますが、低山であっても、山の上は、都市部に比べると過ごしやすいものです。標高931mの六甲山は、山麓の市街地と比べて5~6℃ほど気温が低く、木陰の道を歩いていると、心地よく感じられるでしょう。
そんな山上の道端などで、これからの時期から秋頃にかけてよく見かける花が、「ツリフネソウ」です。今回は、帆掛け船を吊るしたようなユニークな形を持つ「ツリフネソウ」について紹介していきます。
牧野博士も命名した不思議な形の花
「ツリフネソウ」は、北海道から九州まで、ほぼ全国で見られる植物で、ツリフネソウ科ツリフネソウ属に分類される一年草です。
六甲山地あたりでは、6月頃~8月頃にかけて黄色い花の「キツリフネ」が、8月頃~10月頃にかけて紫色の花の「ムラサキツリフネ」が咲きます。
ちなみに、白っぽい色をした花を咲かせる「ハガクレツリフネ」という品種もあり、これは朝ドラ「らんまん」で話題の牧野富太郎博士が命名したもの。
「ツリフネソウ」という名前は、独特な花の形に由来します。横から見ると、まるで帆掛け船を吊るしたような、面白い形をしています。
前面には、唇状の2枚の花弁が癒着した状態で広がっていて、その奥に筒状になった萼片(がくへん)があり、一番奥の、細い渦状の「距(きょ)」という部分に蜜をためています。
前面の花弁が蜜を吸う虫がとまるためのヘリポートの役割をして、その内部の「蜜標(みつひょう)」という模様で、虫たちを誘うのです。
ただし、一番奥にある蜜を吸えるのは、細長いストローのような中舌をもったマルハナバチの仲間だけ。
この花の独特の形状は、この特定の虫にだけ蜜を与えるために進化したものなのです。