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産地直〝食〟なソトごはん vol.04 北の荒海が旨味を育てる「荒海ホタテ」【岩手・野田村】

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意外と難しい⁉︎ 「ホタテの赤ちゃん」のすくい方

ちなみにこのホタテたち、じつは1mmも満たない「ラーバ」と呼ばれる赤ちゃんの頃からこの海で養殖されています。もちろん、ラーバもこの野田の海で採取したもの。そしてこの採取の作業が、ホタテの養殖において最も大変なのだと小谷地さんはいいます。

「結構原始的なやり方でな、約40年間も同じことやってるんだ! 今からそれを見に行くべ」と、ラーバを採取している場所へと向かいました。

そのポイントへ到着すると、小谷地さんは網の入った玉ねぎ袋を引き上げました。

この袋の中にはもうひとつ網が入っていて、二重の構造になっています。この網は、ホタテの赤ちゃんをゲットするための「仕掛け」です。

小さな小さなホタテの赤ちゃんは、4月下旬から5月上旬にかけて、北の海から海流にのって、野田の海へと流れてきます。

その海流の通り道にこの網を仕掛けると、ラーバが玉ねぎ袋の網目から中へ入って、内側の網にくっつきます。そうして中で大きくなって、いつの間にか玉ねぎ袋から出られなくなるという仕組みです。いわばホタテの赤ちゃんすくいですね。

こう書くと簡単そうにも見えますが、じつはこのホタテの赤ちゃんの採取がとても重要で、かつ難しいところでもあると小谷地さんはいいます。

「ラーバの浮遊期間はわずか一週間といわれていて、着底すると死んじまう。おまけに、ラーバがどこからどう流れてくるか、はっきりとはわからねえんだ」

ラーバの調査! 試行錯誤して捕獲する

ここで重要になってくるのが、落下傘という袋を投げて、水ごと引っ張り上げる、ラーバの調査です。

あちこちの水をひっぱりあげ、その中にいるラーバを漁協の顕微鏡でひとつずつ探します。こうすることで、ラーバがいるであろうおおよその位置を割り出し、失敗が少なくすることができます。

この調査は一週間に1回、最盛期では4日に1回ほど行います。何度も水を持ち上げるので、とにかく大変! 

漁師さんたちもだんだんいやになってくるそうですが、ホタテの養殖は、このラーバをいかにたくさん捕まえられるかにかかっているので、そうもいっていられません。

うまくとれないときは時期ずらしたり、研究センターに依頼して調査してもらったり、試行錯誤して何度も何度も行っているのです。

「これが取れないと、どうにもならないからな。まあみんな、取れないときはわーわー騒ぐけど、取れるときはなんにも言わねえ。だま~って、にこにこしながらやってるよ」(小谷地さん)

震災で流された220隻の船! 荒波を乗り越えつなげる養殖

荒海ホタテは40年以上の間、このような方法を守っておいしいホタテを養殖し続けています。

そしてこのホタテの養殖は、12年前、震災が起こった年でも途切れることはありませんでした。

震災による被害は甚大なもので、220隻あった漁師の船は一隻もなくなり、ホタテも道具も、なにもかもが流されてしまうという惨状でした。残ったのはたまたま山に置いていた、漁協の定置船、たった一隻だけ。

しかし、この状況でも全員の漁師が漁を続けると決断。「できるとこまでやるか!」と小谷地さんは漁師のみんなをまとめて、あちこちにかけあい、震災からわずか1カ月半でホタテの養殖を再スタートさせました。

小谷地さんは、震災があったからこそ奮起できた、と当時のことを振り返ります。

「みんなして馬鹿だったね。『なんもねえのにできんのか?』って。でも、一人じゃなかったからやれたところはあった。」

漁師さんたちが荒海の時代を乗り越えたからこそ、今の荒海ホタテの養殖があるのです。

「とはいえ、もういやだけどね。今日やれと言われたらやらないよ(笑)」(小谷地さん)

漁師さんいちおし! キャンプ場での〝最高の食べ方〟

荒海ホタテは、貝柱にとても甘みや食感もぷりぷり。

お取り寄せでもおいしいですが、現地で新鮮なうちに食べるのがおすすめです。

漁師でありながらもキャンプを趣味にしている嶽間沢さんは、アヒージョがいちおしだといいます。

「うまいですよほんとに。この前にキャンプ場でホタテのアヒージョを作ったんですけど、これが最高でした‼︎」

景色のよいキャンプ場で、身の引き締まったおいしいホタテを食べる。これこそ最高の贅沢です。

例年、荒海ホタテは5~12月まで販売されますが、旬は6~9月にかけての夏の時期。

ぜひ現地で、北の海の旨味がたっぷりつまった、旬の荒海ホタテを味わってみてはいかがでしょうか。

■荒海ホタテ

https://araumidan.jp/

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