いろんなタイプの綿雲とその性質
綿雲は、いろいろな要因で発生します。そして、日差しの強さや気圧配置などの条件によって、さまざまなタイプが発生します。例えば、夏の強い日差しのもとで発生する場合は、雲の底は比較的平らで、上方はカリフラワーのようにむくむくしている姿になります。ちょっと筋肉質な感じがして、まるで孫悟空が乗っている「筋斗雲」のようです。これがさらに発達すると「入道雲」になることもあります。
冬の綿雲は、太平洋側では、わりとぼんやりとした姿をしていることが多いようです。日差しが弱く、上昇気流があまり起きないときに発生する綿雲は、輪郭がはっきりしない姿になりがち。
ところが、同じ冬の綿雲でも、日本海側では状況が異なります。大陸から吹きだす季節風に乗って、シベリア高気圧から流れてきた冷たい空気の塊が、日本海の上を吹き渡るときに、海から熱と水分の補給を受けて綿雲が発達。そのため、まるで夏の積雲のような姿になることも珍しくありません。
なお、天気の良い昼間に日差しの影響で発生し、日が沈むころにしぼんでいくタイプの綿雲は、「晴天積雲」と呼ばれていて、雨をもたらすものではありません。
一方で、大気の状態が不安定ななかで発達する積雲は、にわか雨やにわか雪を降らせることがあります。
毎日のように空を見上げていても、いつも違う姿をしている雲。まったく同じ形になることはなく、じっと見ていると、少しずつ変化しているのがよくわかります。
雪の研究で知られる、北海道大学の中谷宇吉郎博士が「雪は天から送られた手紙である」という言葉を残しておられますが、雲もまた天からの手紙と言えるのではないでしょうか。
大空で起きているダイナミックな現象を「見える化」してくれるステキなお手紙です。
【監修】
■大矢康裕
■プロフィール:気象予報士、気象予報士会CPD認定第1号。山岳防災気象予報士として活動。著書に『山岳気象遭難の真実 過去と未来を繋いで遭難事故をなくす』(山と溪谷社)