【蚊の秘密兵器.02】血を吸うために高度に進化した針
蚊が、人間に気づかれずに血を吸える理由は、その針の構造にもあるようです。
「蚊の針の太さは種類によってさまざまですが、だいたい0.06mmといわれています。蚊の針は、上唇、大顎(1対2本)、下咽頭、小顎(1対2本)と下唇の7本のパーツでできており、実際に動物に刺さるのは下唇以外の6本です」と笹岡さん。
あんな小さな蚊の針が、7本ものパーツから成ることに驚きますが、そのうちの6本に刺されていると思うとよい気分はしません。蚊の針の7本の部分につき、それぞれがもつ機能を整理してみました。
「上唇(じょうしん)」血を吸い上げる管。直径約0.03mmで、先端が鋭くとがっている。大顎と下咽頭に支えられて1本の管のようになる
「大顎(だいがく)」1対2本。鋭い先端をもち、皮膚を切り開く
「下咽頭(かいんとう)」唾液を注入する管。先端が鋭い
「小顎(しょうがく)」1対2本。上唇・大顎・下咽頭の4本を両サイドから挟んでいる。先端がのこぎりのようにギザギザ
「下唇(かしん)」上記6本のパーツを束ねて収納する鞘。また、皮膚に針を刺す際、針を支える役割もある。
笹岡さんによると、「蚊は小顎の先端で、刺される動物が痛く感じないように上手に皮膚を切り裂いています。管(上唇・大顎・下咽頭)と小顎を交互に出し入れしながら、管を皮膚に差し込んで吸血するんです。これらの7つのパーツがうまく作用しあっているので、細くても刺すことができるのです」とのこと。
蚊が皮膚を切り裂きながら6本の管を差し込んでいると思うと、思わずぞっとしてしまいます。しかし、複数の針を動かして皮膚に管を差し込む方法は、抵抗が少ない優れた方法だということがわかっています。
蚊の針の構造をヒントに、痛みの少ない注射針も開発されているとのこと。
この新技術の注射針なら、組織の破壊を最小限にとどめつつ採血や薬剤注入が可能なため、糖尿病患者の自己血糖値検査や、子どもの治療に大いに役立つと期待されています。
吸血するために高度かつ複雑な進化を遂げた、蚊。次回は、そんな蚊が媒介する、恐ろしい病気についてお話を伺います。
【取材協力】
■大日本除虫菊