創業から守り続けてきたものを伝えつなぐ
最後に、尖った先を水で湿らせて柔らかくし、専用のへらを使いながらきれいに巻き上げます。それを胴体の中へ押し込みながら、徳利が立つように底の形を平たく整えて完成です。底を作るためのへらは、剣道の竹刀を再利用したもので、社長が考案したオリジナルの道具なのだとか。
原料のイカはサイズや肉の厚さがさまざまなので、イカに合わせた手作業が必須。また、乾燥状態や色合いは気温や湿度に左右されるため、きれいにふっくらと色よく膨らませるためには熟練した技術はもちろんのこと、季節による調整も必要です。
「昔は宮古・山田地区で7軒、いか徳利を作っていました。今はうちだけ。全国的にもいか徳利を作っている会社は珍しくなりました。
この商品はとても手間暇がかかりますし、原料のスルメイカは近年不漁で、値段が以前の4倍まではね上がりました。しかし、これを守り続けなければ、いか徳利がなくなってしまいます。やめてしまうのは簡単。当社の看板商品をなくすわけにはいきません。いか徳利は「つなぐ」仕事なのです」と、木村社長は語ります。
創業から約100年の間、幾度も自然災害に襲われ、2011年の東日本大震災でもまた、店舗や工場がすべて流されてしまいました。ふたたび再建後、今も現役でイカをさばく木村社長が守り続けてきた、木村商店の精神が「いか徳利」には息づいているのです。
【データ】
■木村商店