滋味深い熱燗を楽しめる「いか徳利」
生産者の現場取材&現地で実食シリーズ、産地直“食”なソトごはん。今回は、岩手県の山田町で一つひとつ手作りされている「いか徳利」をご紹介します。
岩手県の山田町は東北沿岸部、リアス海岸で知られる三陸海岸のちょうど真ん中あたりに位置する小さな町。その山田町にある木村商店は、1908年(明治41年)創業の水産加工品製造販売を行う中小企業です。
この木村商店の看板商品が、近海のスルメイカを使った「いか徳利」。
熱燗を注ぐと、飴色になったイカの色や風味を楽しみながらお酒が味わえる「いか徳利」。柔らかくなってきたら、かじってつまみにもなるという日本酒好きにはたまらない逸品です。
完成までは細かな手作業の連続
木村商店の「いか徳利」は、37歳のときから社長を務める木村トシさん(78)の先代が、宮古市の浄土ヶ浜に土産品らしいものが売っていないことから、販売を思いついたもの。
当時、いか徳利を名物にしている地域はほかにもあったものの、作り方は試行錯誤を経て独自に開発。完成までは25工程を超えるほど細かい手作業の連続です。
製造は、鮮度のよい状態で冷凍したスルメイカの解凍から始まります。腑(ワタ)、ゲソ、エンペラを取り胴体だけにし、皮をむいて洗います。それを吊るして1日干し、表が乾いたらひっくり返してさらに半日~1日吊るし乾燥させます。この作業を3~4日くり返します。
裏返したイカの胴体をもとに戻し、さらに少し乾燥させて、完全に硬くなる前に胴体の下を絞り、コルクをはめて注ぎ口を作ります。このとき、コルクをはめた胴体をタコ糸で縛り注ぎ口を成型しますが、シワが寄らないようきれいにできるまでは3年ほどの経験が必要で、現在工場でこの作業ができる人は3名だけ。
次にコルクに針を差し、コンプレッサーで胴体に空気を入れて膨らませ、すると胴体はしぼむので、また空気を入れます。この作業を2~3日くり返します。