自然界には人間から見ると、さまざまなちょっと変わった生態をしている生き物がいます。観察していると、その姿がとても愛しくなってきます。今回は、湖や沼、河川などの淡水にいる生き物たちについて、サンシャイン水族館の丸山克志館長にうかがいました。
生き物の〝へん〟に秘められた偉大な力
変な生き物の〝へん〟とは生き物たちの生にかかわる、偉大な力のことです。人間の視点から見たら、見た目がへん! 生き方がへん! 怖い、ユーモラス、かわいい、なんでこうなったのだろう? と首をかしげたくなるものがいろいろいて、これまで水族館でも特別展で紹介したことがあります。
そこには、「個が生きるため」「種として命をつなぐため」、人間にはない不思議な魅力がいっぱいあります。人間と違うという視点で見たときには、〝へん〟という言葉が浮かびますが、その生につながる〝へん〟には、愛しささえ覚えるものがあります。
貝に卵を産み付ける長い管が特徴【タナゴ】
人間の指ほどの長さで、かわいい目をしたこの魚はタナゴといいます。タナゴは二枚貝のエラ内に卵を産みつけるという生態を持っています。そのため、メスは貝の中に卵を産むための長い輸卵管を持ってます。
貝の中に産卵するため、まるで子どもたちは孵化をすると貝から生まれたように出てきます。川によくいるので、よく観察してみて下さい。
【データ】
■コイ目 コイ科 タナゴ亜科 タナゴ属
■生息地 関東以北の太平洋側
長いシリビレでライバルを寄せ付けない【オイカワ】
全長15cmほどの大きさをした、河川では比較的出会う確率の高いコイ科の小魚です。メスの気をひく婚姻色の綺麗なオスのオイカワに出会えるのは繁殖期の春~夏。
婚姻色でメスの気を引いたとしても、周りにはほかにもライバルがいます。実際にペアになるためには、他のオスと戦い勝ち抜かなければなりません。
勝つための武器として顔の周りに現れる“追星(おいぼし)”というイボのような突起があります。その突起で相手を威嚇したり、激しく体当たりしたりします。オイカワのオスの伸長したシリビレも、自分の子孫を残すために役立ちます。
オスが作った縄張りでメスは産卵しますが、隙を狙って産卵した卵に自分の精子をかけようとする別のオスが周囲にいるため、オスは大きなシリビレでメスの体をお腹側から包み込み、他のオスの精子をブロックします。さらに精子がシリビレの溝を通って卵に直接かかるような構造にもなっています。
【データ】
■コイ科 ダニオ亜科
■生息地:主に西日本