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【書評】今どきまっとうなアウトドア本 vol.06 『野草がハーブやスパイスに変わるとき』

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空き地に勝手に茂っているアイツが映えスイーツに?

都市部でも、空き地などでよく見かける「クズ」というつる植物。根っこは生薬の「葛根(かっこん)」、風邪薬として親しまれている「葛根湯」の原料です。

真夏頃から初秋にかけて、紫色のきれいな花を咲かせます。ほんのりといい香りがして、「秋の七草」のひとつにも数えられています。この花は二日酔いに効く民間薬でもあるそうです。地下茎にはでんぷんが多く含まれ、これを精製したものが「葛」粉で、産地の名を冠した「吉野葛」「朝倉葛」などは高級食材として知られています。

この項では、見た目にも美しい「花あめ」の作り方が紹介されています。映え系のビジュアルに魅せられて、花の季節が来たら、ぜひ作ってみたいと思いました。

ほかにも、ツユクサやドクダミ、タンポポなど、身近な植物の意外な使い道に感心させられたり、見たことのない植物の項なら、図鑑的にも楽しめます。朝ドラ「らんまん」の影響もあって、植物に注目が集まっていますが、ただ見るだけではなく、人の暮らしに深くかかわってきたことを知ったり、美味しい食べ方を知ることで、よりいっそう自然が好きになる……。そんなきっかけになりそうな本です。

                     

【データ】

■山下智道 著『野草がハーブやスパイスに変わるとき』(2023年3月刊/山と溪谷社)

https://www.yamakei.co.jp/products/2822580480.html

■山下智道(やました・ともみち)

■プロフィール:福岡県北九州市出身の野草研究家。国内外で多数の観察会・ワークショップなどを開催。「ハーブ王子」としてTV出演・雑誌掲載等も多数。主な著書に『野草と暮らす365日』(山と溪谷社)や『ヨモギハンドブック』(文一総合出版)など。

https://www.tomomichiyamashita.com/

■評者:根岸真理

■プロフィール:1961年、神戸市須磨区生まれ。1歳前に親に連れられて六甲登山デビュー。アルパイン歴30年の自称アウトドアライター。神戸新聞総合出版より『六甲山を歩こう!』ほか六甲山関連本を4冊上梓。『神戸新聞』のおでかけ情報欄「青空主義」欄に月イチで六甲山情報を執筆中。

http://653daigaku.com/information/14176/

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