独自の構造を持ったコケの不思議
動物の遠い祖先が海の中で暮らしていたように、植物もまた海から陸に進出してきた進化の歴史があります。そんななか、先陣を切って陸に上がってきたのがコケ類なんだそうです。
水中から陸上に生活の場を移すためには、必要な水分を確保する仕組みが必要になります。多くの陸上植物は、根っこを発達させて土の中の水分を吸い上げたり、取り込んだ水分を逃がさないように、体表面にクチクラという層を作ったりしました。しかし、コケ類は土や石にしがみつくための「仮根」はあっても、水を吸い上げる根っこがありません。また、外部との防壁であるクチクラもありません。
それでは、雨が降らない日が続くと、干からびて死んでしまうのでは……と心配になりますが、カラカラに乾いてしまっても、一気に生き生きと甦る不思議な仕組みを持っているそうです。本書には、そんな「コケの不思議」がいろいろと解説されていて、思わず引き込まれてしまいます。
日本にはコケの仲間が1800種以上もあるそうです。本書には、比較的見つけやすいもの、見分け方がわかりやすいコケ100種類を厳選し、写真で紹介しています。見つけたコケの種類を見分けることができたら楽しいだろうなと思います。
さて、次のお休みには、コケに誘われて、コケハントに出かけてみましょうか。
【データ】
■このは編集部 編『新訂版 コケに誘われコケ入門』(2017年9月刊/文一総合出版)
■このは編集部
■プロフィール:生きもの好きの自然ガイド『このは』(文一総合出版/現在休止中)編集部。『きのこの世界はなぞだらけ』や 『散歩で出会うみちくさ入門』 などを編集。同社のコケ関連の書籍では、『あなたの あしもと コケの森』もお勧め。
■ https://www.bun-ichi.co.jp/tabid/57/pdid/978-4-8299-9002-5/Default.aspx
■評者:根岸真理
■プロフィール:1961年、神戸市須磨区生まれ。1歳前に親に連れられて六甲登山デビュー。アルパイン歴30年の自称アウトドアライター。神戸新聞総合出版より『六甲山を歩こう!』ほか六甲山関連本を4冊上梓。『神戸新聞』のおでかけ情報欄「青空主義」欄に月イチで六甲山情報を執筆中。