キャンプや登山などのフィールドでは、なかなか出会うことができない生物に遭遇することがあります。今回は海辺や海中に棲息する、ちょっと変わった生き物についてサンシャイン水族館の丸山克志館長にお話をうかがいました。
生き物の〝へん〟に秘められた偉大な力
変な生き物の〝へん〟とは生き物たちの生にかかわる、偉大な力のことです。
人間の視点から見たら、見た目がへん! 生き方がへん! 怖い、ユーモラス、かわいい、なんでこうなったのだろう? と首をかしげたくなる姿がいろいろあり、これまでサンシャイン水族館でも特別展などの催しで紹介したことがあります。
そこには「個が生きるため」、「種として命をつなぐため」の人間にはない不思議な魅力がいっぱいあります。
人間とは違うという視点で観察したときには、〝へん〟という言葉が浮かびますが、その生につながる〝へん〟には、愛しささえ覚えます。
派手できれいなものには毒がある?
【ハナミノカサゴ】
本州の太平洋沿岸や九州・琉球列島、小笠原諸島沿岸などにも分布している魚です。大きな胸ビレがライオンのたてがみに例えられ「Lionfish(ライオンフィッシュ)」とも呼ばれています。大きな口で一瞬にして魚をのみこんで捕食します。
体やヒレの派手な色や模様は、毒をもっていることを他の生物にアピールするためといわれています。背ビレには強い毒をもち、刺されると激しい痛みに襲われます。
もし刺されたら、タンパク質の毒なので、応急処置としては火傷しない程度の熱い湯(50℃前後)に浸けるとよいでしょう。そのうえで、もし症状が軽くても、念のため病院に行くようにしてください。
よく似た生物でミノカサゴがいますが、やや温帯性の地域に分布し、尾ビレにハナミノカサゴのようなはっきりした斑紋がない点が、ハナノミカサゴとの違いです。ミノカサゴも毒を持っているので注意してください。
【デ―タ】
■ハナミノカサゴ
■スズキ目 フサカサゴ科 ミノカサゴ属
■生息地:本州、九州、沖縄、小笠原諸島
幼魚による集団団子泳ぎがかわいい
【ゴンズイ】
ゴンズイは18cmほどになる魚で、口の周囲にひげがあるのが特徴です。房総から九州までの浅めの岩礁域で見られます。ゴンズイもトゲに毒を持っているので注意しましょう。
幼魚の頃はゴンズイ団子と呼ばれる密集群を作って泳ぐことでも知られています、小さい時に集まれるのは、集団行動を促すフェロモンを出しているからです。
【デ―タ】
■ゴンズイ
■ナマズ目 ゴンズイ科 ゴンズイ属
■生息地:本州中部以南の沿岸部
子どもを肛門から吐き出す梅干しに似た生物
【ウメボシイソギンチャク】
ウメボシイソギンチャクは潮だまりなどで出会えるイソギンチャクです。名前の通り縮こまると梅干しのように見える色や形をしています。
このイソギンチャクは卵で子どもを産まず、無性生殖を行います。オスとメスが体細胞を寄せ集めて受精卵のようなものを作り、体内で受精卵の発生と同じような経過をたどって、子孫を増やしていきます。
生まれた個体は全て親と同じ遺伝子を持つ、いわゆるクローンです。胃の中で育ったクローンたちは、口も兼ねた肛門から吐き出されて生まれ出ます。
貝類の仲間に見えますがじつはフジツボの仲間で、甲殻類の仲間です。蔓脚と呼ばれる器官を動かすことで海中のプランクトンを集めて食べています。
【デ―タ】
■ウメボシイソギンチャク
■イソギンチャク目 ウメボシイソギンチャク科 ウメボシイソギンチャク属
■生息地:本州中部以南