コンクリートジャングルなんて言われる大都会でも、よく見るとあちこちでいろんな〝自然〟が息づいています。街中で出会える小さな自然を観察してみませんか? 今回は、春先から秋頃にかけて、日本全国どこででも見られる「ハルジオン」と「ヒメジョオン」をご紹介します。
ハルジョオン? ハルジオン?
ある年代以上の方なら、ユーミンの『ハルジョオン・ヒメジョオン』という曲のことを覚えているかもしれません。1978年にリリースされた通算10枚目のシングル曲で、ちょっと切ないメロディが懐かしい曲ですが、このタイトルには、ちょっと微妙なニュアンスが含まれています。
春に咲くふたつの花の名前を連ねた曲名ですが、実はひとつめの名前が植物学的には正しくありません。「ヒメジョオン」と揃えて韻を踏むために、あえて「ハルジオン」ではなく「ハルジョオン」とした、確信犯的なネーミングではないかと勝手に想像しているのですが……。
「ハルジオン」の命名者は牧野富太郎
植物学的に言うと、「ハルジオン」が正しい名前です。
朝ドラ人気で、「日本の植物学の父」と言われる、牧野富太郎博士に注目が集まっていますが、命名したのは、まさにその牧野博士です。漢字で書くと「春紫苑」。春に咲くシオンに似た花という意味です。
「ヒメジョオン」の方は「姫女苑」。漢字を見ると違いがわかりやすいかもしれません。
ハルジオンも、ヒメジョオンも、キク科ムカシヨモギ属の多年草。北アメリカ原産の外来種で、今ではどちらも日本全国に定着しています。
名前も姿もよく似ているのですが、日本の植物界では、ヒメジョオンの方がやや先輩格。江戸時代の末期に渡来し、明治の初年にはすでにあちこちで雑草化していたそうです。
ハルジオンが日本に移入してきたのは、ヒメジョオンに遅れること50~60年後の大正期。これも、観賞用として移入したものが勝手に逃げ出して、全国に分布を広げています。