厳しい寒さの中のシャワーやトイレ……、隊員の雪上車生活
移動中、隊員たちは雪上車でどんな暮らしをしているのでしょうか。雪上車内にはベッドとして使える棚があり、2人寝ることができます。そのほか、雪上車が引くたくさんのそりの上に、コンテナ型の居住モジュールがあります。
「そんなに広くはないんですが、6m×2.4mほどのモジュールのなかで4人ほどが生活していました。雪上車のよい点は、エンジンをかけておけば暖かいこと。一方、モジュールは電気を供給しないと暖房がききません」
朝食と夕食は、食堂車両と居住モジュールの2カ所に分かれてとります。
ドームふじ観測拠点IIに着いてからは、そりにのったモジュール2つを平行に配置し、モジュール間に床、壁、天井を組み立てて、16人全員がそこで一緒に食事をとれるようにしました。
ところで、シャワーはどのように浴びるのでしょうか。
「専用の設備はなく、モジュール内で浴びたこともありますし、外に立てた簡易テントで、ということもありました。雪をヒーターで温めてお湯にして、簡易シャワーでちょろちょろと浴びる感じです」
一方、トイレは専用のそりの中にペール缶トイレを設置し、汚物が土嚢袋にたまったら、ドラム缶に集めて昭和基地まで持ち帰ります。凍ってしまうので臭いはほとんどないそうです。
「トイレには暖房がなく、便座が冷たかったのですが、ある隊員が工夫して、電気で暖かくなる便座を作ってくれたので、かなり助かりました」
こうしてドームふじ観測拠点IIに到着し、40日にわたって掘削拠点の設営を行った永木さん。今後6年間この場所に隊員が派遣される予定で、100万年を超える最古級の氷床コア掘削を目指すといいます。
日本がこれまでに掘削した氷床コアのうち、最も古いのは72万年前のもの。さらに古い時代のものを入手できれば、新たに分かることがあるかもしれません。ゆっくりしたペースの雪上車の旅が、地球の未来を変える発見につながる。そう考えると、なんだかわくわくしてきませんか。
【取材協力】
■国立極地研究所