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最低限知っておくべき法律や条例とは？
「知らない」というのは恐ろしいもの。評者が知る古い事件で、10年ほど前、那智の滝を登ろうとしたクライマーが現行犯逮捕されるという事件が起きました。「ご神体を登るなんて非常識」と考える人もいれば、「大仏に登ったらダメなことはわかるが、自然物である滝を登って何が悪い」と考える人もいます。この件は非常に特殊な事例ですが、天然記念物の岩とは知らずに登ってしまって、あとから問題になるようなケースもあります。
那智の滝といえば、落差133mとその落差が日本一の滝であるだけでなく、聖地熊野・那智大社のご神体であり、世界遺産でもある名瀑。くだんのクライマーは「日本一の滝を登りたかった」と述べたそうですが、神社所有の立ち入り禁止区域に入ったことによる「軽犯罪法違反」で現行犯逮捕され、その後「礼拝所不敬罪」で書類送検されるという結果になりました。
ほかにも、キャンプをしてはいけない場所、勝手に歩いてはいけない場所などもあり、知らず知らずに法令違反をしてしまう可能性はいろいろとありそうです。
「山の中で、MTBやオフロードバイクで走ってはいけない場所ってあるの？」
「登山道をMTBで走ってる人がいた。危険だし違法ですよね？」など、ありがちな疑問点について解説。
例えば、自然公園内などで、MTBの乗り入れが禁止されている場所もありますが、そうでないなら登山道自体が通行禁止というわけではありません。法律の規定ではなく、マナーの問題というケースもあります。
そのほか、「山で見つけた木の実やきのこを持ち帰ってもいいの？」「キャンプ中にドローンを飛ばして撮影してもいいの？」「禁漁区じゃないから釣りをしてもいいんだよね？」「小さい魚が釣れたらリリースしないといけないの？」「浜辺に打ち上げられている海藻や貝は拾って帰ってもいいよね？」
普段は考えたことがない、あるいは意外と知らないことが、たくさんあります。せっかくの休日の楽しみが、トラブルになってしまわないように、必要な知識を身につけておくことは大切なこと。愛するアクティビティを末永く楽しむためにも、ぜひご一読を。
【データ】
■中島慶二・溝手康史・益子知樹・ベリーベスト法律事務所・上野園美 監修『アウトドア六法 正しく自然を楽しみ、守るための法律』（2023年3月刊／山と溪谷社）
■ https://www.yamakei.co.jp/products/2822500490.html
■中島慶二（なかじま・けいじ）
■プロフィール：江戸川大学社会学部現代社会学科教授。国立公園研究所長。国立公園や自然遺産など自然保護と地域づくりの現場で環境省レンジャーとして長く実務に携わってきた。その経験をもとに、法律制定や予算新設など全国的な制度改正にも携わる。
■溝手康史（みぞて・やすふみ）
■プロフィール：弁護士。みぞて法律事務所所属。国立登山研修所専門調査委員、文科省冬山事故安全検討会委員、日本山岳サーチ・アンド・レスキュー研究機構理事、日本山岳スポーツクライミング協会委員などを歴任。
■益子知樹（ましこ・ともき）
■プロフィール：元・茨城県農林水産部次長兼漁政課長。茨城県庁では一貫して水産業に関する業務に携わる。現在はその経歴を生かし、水産関連のコンサルタントなどを行っている。趣味はフライフィッシング。
■ベリーベスト法律事務所
■プロフィール：全国に63拠点を展開、390名を超える弁護士と610名以上のスタッフを擁する総合法律事務所。
■ https://www.vbest.jp/roudoumondai/
■上野園美（うえの・そのみ）
■プロフィール：弁護士。近年、日本有数の担当数を誇るダイビング事故訴訟を担当している弁護士。「現場を見たい」との思いから自身もダイバーになり、より現実を知る立場から、ダイビングを知らない裁判官へ伝えるために問題提起を続けている。
■評者：根岸真理
■プロフィール：1961年、兵庫県神戸市須磨区生まれ。1歳前に親に連れられて六甲登山デビュー。アルパイン歴30年の自称アウトドアライター。神戸新聞総合出版より『六甲山を歩こう！』ほか六甲山関連本を4冊上梓。『神戸新聞』のおでかけ情報欄「青空主義」欄に月イチで六甲山情報を執筆中。
