ソトラバ

知っているようで知らない南極観測隊のリアル【vol.02】活躍の舞台は「地球最後のフロンティア」

楽しい外遊びはソトラバで。アウトドアWEBメディア Soto Lover

過去を知り、未来に生かせる「地球の宝箱」

南極ではいろいろな分野の専門家が力を合わせ、さまざまな観測や研究を行っています。

南極で観測を行うのはなぜでしょうか。それは南極が、人間の活動による環境への影響が最も少ない土地であるため。氷や空気、海を調べることにより、環境問題の基礎となる情報を正確に集めることができる、地球上でもまれな場所だからです。

氷についていえば、南極大陸は、氷床(ひょうしょう)と呼ばれる厚い氷の塊に覆われています。降った雪が積み重なってできたもので、大昔の空気や塵などが閉じ込められています。

これをドリルで掘って円柱状にくりぬいたものを「氷床コア」といい、持ち帰って解析すれば、数十万年前の気候を知ることができます。このため、氷床コアは「地球環境のタイムカプセル」と呼ばれています。

この氷床コアの研究によって、過去の気温と二酸化炭素濃度が、連動するように上昇や下降を繰り返してきたことが分かっています。地球温暖化が問題となっている今、過去の環境を知ることは、地球の未来を考えるにあたって非常に重要なことなのです。

日本の南極観測隊は、これまでに大きな科学的成果を挙げています。そのひとつがオゾンホールの発見。太陽の紫外線から私たちを守っているオゾン層が、南極上空で極端に減っており、穴が開いているようになっていることを、1982年(昭和57年)に昭和基地で初めて観測しました。

このほかに、南極大陸の内陸部で約1万7000個の隕石を発見したことが挙げられます。氷に包まれていた南極の隕石は、風化せず落下当時の状態で保たれていることが多い貴重な資料。採取された隕石の一部は、東京・立川市にある南極・北極科学館で見ることができます。

                              

                                   

あなたも観測隊の一員になるチャンスがある!

「地球最後の秘境」とも呼ばれる南極大陸。なかなか行くことができない場所だからこそ、南極観測隊の一員として、一生に一度は行ってみたいと思う人は多いかもしれません。

南極観測隊の隊員は、主として観測を行う研究者です。大学などの研究機関に所属する人たちが、南極での研究計画を提出し、その内容をもとに審査・選考が行われます。

研究者のほかに必要とされるのが、基地運営のための人材です。衛星通信や発電機などの多種多様な機械や設備を運用・整備する人たちを、それらを開発する企業から推薦してもらい、国立極地研究所の所属として南極に派遣しています。

そのほかに、調理、医療、野外観測支援の分野では、毎年一般公募が実施されています。野外観測支援の担当者は、南極大陸での観測や設営の作業をする際に、隊員の安全を守るのが仕事。冬山での登山経験と装備の知識、とくにレスキューの技能が重視されるそうです。

そして、医療が限られた南極では、心身ともに健康であることが必須条件。夏隊より越冬隊のほうが健康診断の判定項目が多く、より頑強な人が望まれています。

南極への道は遠いように思えて、人によっては意外に近いところにあるかもしれません。いつか南極観測隊に参加したいと夢見ているなら、専門技術を磨いて、その実現に一歩ずつ近づく努力をしてみてください。

                                                      

【取材協力】

■国立極地研究所

https://www.nipr.ac.jp/

大阪オートメッセ2025