日本の約37倍もの面積をもつ、広大な南極大陸。厚い氷に覆われた、生存が困難な最果ての地で、研究に励む人々がいます。さまざまな分野のスペシャリストから編成される南極地域観測隊です。
本隊の隊員たちは、南極観測船「しらせ」で昭和基地に向かいます。現地で彼らを迎えるのは、世界一きれいといわれる冷たく乾いた空気と、真夏の強い日差し、そして氷に閉ざされた周囲の海や、その向こうに果てしなく広がる南極大陸です。
彼らはこの過酷な環境でどのように暮らし、どのような研究を行っているのでしょうか。日本の南極観測における最大の拠点・昭和基地と、南極での隊員の活動についてご紹介します。
お風呂にWi-Fi、おいしい料理。設備が充実した昭和基地での暮らし
東京からはるか1万4000km。南極大陸から約4km離れた東オングル島に位置する昭和基地は、南極に4つある日本の基地のなかでも最大規模です。
島の北側に、居住棟や発電棟、汚水処理棟、衛星受信棟などの60ほどの建物と、アンテナなどの観測設備が立ち並んでいます。
中心となるのが3階建ての管理棟。ここには厨房や食堂、隊長室や通信室のほか、卓球やカラオケなどができる娯楽室やバー、動画配信スタジオまであります。
寝室は、夏隊の場合は相部屋のこともありますが、越冬隊員には個室が割り当てられます。宿泊棟によって設備は多少異なるものの、水洗トイレやお風呂があり快適に過ごせます。また、Wi-Fiを完備しており、人数の多い夏期間は少々つながりにくいものの、インターネットを通じて家族や友人と連絡が可能です。
食事は多くの隊員にとって最大の楽しみです。限られた食材を使って、いかにおいしく飽きのこない料理を作るかが、調理担当者の腕の見せどころ。長期保存が難しい生野菜はとても貴重なごちそうで、昭和基地の室内農場で水耕栽培も行われています。
極地の厳しい自然と共に、昭和基地の1年のサイクル
12月下旬に「しらせ」で昭和基地に到着した隊員は、ここを拠点としてそれぞれの研究や活動に取り組みます。太陽が沈まない白夜が約50日続き、周囲の雪が解けて活動しやすい夏は、基地のメンテナンスや引き継ぎなどで忙しい季節。
夏の終わりに、前年から滞在していた越冬隊と、夏隊を乗せた「しらせ」が帰国の途に就き、にぎやかだった基地は静けさを取り戻します。この時期からたびたびブリザードが吹き荒れるようになり、隊員は安全のために建物から出られないこともあります。
3~5月の秋は、冬を迎える準備期間。日照時間はどんどん短くなり、6月には一日中太陽が昇らない極夜となります。極夜の期間中は野外での作業ができないので、隊員は基地内でできる作業をして過ごします。
最低気温−45.3℃を記録したこともある厳しい冬を乗り切ると、久しぶりに見る太陽の輝きがうれしい春。除雪作業や、野外での調査、本隊に先駆けて飛行機でやってくる先遣隊を迎える準備などが行われます。