ついに「野糞率100%」を達成!
野糞という、一見野放図な行いでありながら、著者はマメな性格の持ち主でもあるようで、自身の野糞をすべて記録しているのがおもしろい。その記録によると、初年の1974年は年間73回。翌年が90回。そこからどんどん経験(?)を積み、年間250回を達成し、1999年にはついに野糞率100%を達成している。
これ、考えてみるとすごいことですよ。写真家としての文化的生活もこなしながらの野糞率100%。
だって、便意は不意にやってくるものでしょう? 山中にいるときならどうにかなるとしても、町にいて、急にお腹がくだり始めたらどうするのか。公園とか空き地とかの人気のない繁みに駆け込んでするしかない。
しかも彼は野糞紳士なので、やりっぱなしで去るのは流儀に反する。人目を避け、ちゃんと地面に穴を掘り、その中に糞を落とし、ティッシュは分解に時間がかかるので使わず、常時携帯している葉っぱで尻を拭く。まるで忍者の如し。
本書で数箇所に挿入されているイラストがやけに達者で、いったい誰の絵かと思ったら、かつて史上最年少で手塚賞を受賞した漫画家の小池桂一氏だった。そんな小池氏は、著者の伊沢正名氏のことを「糞土師(ふんどし)」と命名している。まったくもって言い得て妙である。
■『くう・ねる・のぐそ 自然に「愛」のお返しを』(2008年12月刊/山と溪谷社)
■著者:伊沢 正名
■https://www.yamakei.co.jp/products/2814047790.html
■評者:とみさわ昭仁(とみさわあきひと)
■プロフィール:1961年東京生まれ。フリーライターとして活動するかたわら、ファミコンブームに乗ってゲームデザイナーに。『ポケモン』などのヒット作に関わる。2012年より神保町に珍書専門の古書店「マニタ書房」を開業。2019年に閉店後は、再びフリーライターとして執筆活動に入る。近著に『レコード越しの戦後史』(P-VINE)、『勇者と戦車とモンスター』(駒草出版)など。