無数ともいえるほどの多種多様な生物が暮らす地球。そのなかには、エサを取ったり、自らの身を守ったりするために毒をもつ生物が存在します。
旅行などで異国の海や川を訪れたとき、未知の生物に出会うと、その珍しさから思わず近寄ったり触れたりしたくなるかもしれません。
そんなとき、どの生物に対して何をしたらいいか、何をしてはいけないかを少しでも知っておくと、類似の生物に遭遇した際にも、行動の参考になることでしょう。
今回は外国の海や川に暮らす、華やかな姿をもちながらも恐ろしい有毒生物をご紹介します。
※各生物がもつ毒は、分析の結果判明している成分のうち特徴的なものを記載しています。
食べるとキケンな「海のリンゴ」、アデヤカキンコ
ナマコの仲間ですが、私たちが知っているナマコとは似ても似つかない、花のような触手をもつ毒生物がアデヤカキンコ。丸っこい体とカラフルな体色から「シーアップル」とも呼ばれています。
フィリピンやインドネシア、シンガポールなどの東南アジアの海に分布していて、最大で長さ20cmほどになる生物です。触手を開いて水中のプランクトンや有機物を集め、中央の口に運びますが、その様子はまるで指に付いたタレを舐めているかのようで、眺めていて飽きません。
刺激すると毒素を吐いたり、触手を閉じて固まったりすることがあります。
問題となるのは、これを食べたとき。分泌液に含まれるサポニンが、吐き気や腹痛の症状を引き起こすことがあります。またサポニンには魚毒性があり、アデヤカキンコと同じ水槽で飼うと、同居する魚が死亡することもあります。
これを食べようという人はめったにいないはずですが、ダイビングなどで遭遇した場合でも、観察するのみにとどめておきましょう。
触手に強い毒をもち「イラクサ」の名がついたパシフィックシーネットル
毒をもつ海洋生物の代表といえばクラゲ。水流にのって漂うその姿は幻想的で、水族館でも人気の生き物です。刺されると大変ですが、眺めるだけなら人に癒やしを与える不思議な存在です。
パシフィックシーネットルは、カナダからメキシコにかけての太平洋沿岸に生息する大型のクラゲで、成長すると傘の幅が20cm、触手の長さは数mに及びます。「ネットル」とはトゲのある植物・イラクサ(棘草)のこと。つまりその名は「太平洋の海のイラクサ」を意味します。
純白のフリルのような口腕(こうわん)と赤い触手、金色の傘をもつ美しいクラゲです。
エサを捕えるために触手に毒針を備えており、刺されると痛み、腫れ、水疱の症状が出ます。本体からちぎれた触手にも毒があるのでやっかいです。
海水浴やダイビングの際に、潮の流れによって突然現れたりするので要注意。
刺されたらすぐに海から上がり、もし長い触手がからみついていたら海水で洗い流します。クラゲの毒はタンパク毒なので、患部を40度以上のお湯で温めると痛みが軽減されます。状態がひどければ病院を受診しましょう。
実は猛毒! アマゾン川支流に生息するポルカドットスティングレイ
黒い体に白い水玉模様が美しく、観賞魚としても人気の淡水エイ。海水性のアカエイの仲間で、成長すると体の幅が40cmほどになります。ブラジル北部を流れるシングー川などに生息し、砂底をすべるように泳いで魚に覆いかぶさって捕食します。
エイは毒をもつ魚としてよく知られていますが、ポルカドットスティングレイも同様に、尾に鋭い毒針をもっています。
向こうから攻撃してくることはありませんが、砂地に潜んでいるところを誤って踏んでしまい、被害にあうことがあります。
その毒針は太くて硬く、返しがついていて折れやすくなっています。刺されると激しい痛みと腫れ、痙攣などの症状が数日以上続くこともあります。
タンパク毒なので、刺されてしまった場合は40度以上のお湯につければ痛みが和らぎますが、毒針は無理に外さず早急に病院に行くようにしましょう。